新規事業フレームワーク完全ガイド|アイデア創出から市場分析・事業計画・評価改善までフェーズ別に使い方を解説

新規事業フレームワークをフェーズ別に使い分けて検討を進める担当者の線画イラスト

「新規事業を立ち上げてほしい」と言われたものの、何から手をつければよいか分からず、手が止まっている担当者は少なくありません。アイデアを思いついても、それが本当に市場に受け入れられるのか、社内でどう説明すれば納得してもらえるのか、判断材料が揃わないまま検討が空回りしてしまうケースもよく見られます。

こうした状況で助けになるのが、新規事業の各フェーズに対応したフレームワークです。フレームワークは、思考を整理し、関係者との議論を噛み合わせるための共通言語として機能します。アイデア創出から市場分析、事業計画、評価改善まで、それぞれの段階で使うべき手法を知っておくだけで、検討のスピードと精度は大きく変わります。

そこで本記事では、新規事業の担当者が実務で使えるフレームワークを、アイデア創出・市場調査・顧客理解・事業計画・評価改善という5つのフェーズに沿って整理し、それぞれの使い方と注意点を解説します。あわせて、複数のフレームワークを組み合わせて使う際の実務フローや、活用時によくあるつまずきについても取り上げます。

沖岡 豊大

沖岡 豊大

我々は誰もが挑戦の歩みを止めず、
失敗を糧に再チャレンジできる寛容な社会の実現を
目指して活動しています。

創業背景としては、エンジニア起業家の養成スクールで得た気づきがきっかけでした。自身のWhy meをプロダクトに落とし込み、投資家に対してピッチを行うのですが、卒業後も挑戦を”続けられる”人間がごく僅かだということを実感しました。志のある優秀な方でも、リスクを背負い、様々なハードシングスを乗り越えながら進み続けることは、実際には非常に困難です。そこで、起業家に同志として寄り添い、何度でも挑戦し続けられる環境を構築したいと思うようになり創業に至りました。
最終的にわたしもいち起業家として、TechHouse.Worksのサポートを得ながら、新たな事業を創るのが私の夢です。

新規事業フレームワークとは?使う目的とメリット

新規事業フレームワークを使う目的とメリットを話し合う担当者の線画イラスト

新規事業フレームワークとは、事業のアイデア出しから市場分析、計画立案、評価に至るまでの思考プロセスを、一定の型に沿って整理するためのツールです。まずは、フレームワークがどのような役割を果たすのか、使う前に何を整理しておくべきかを確認しておきます。

フレームワークを使う目的とメリット

新規事業の検討は、ゼロから発想し、限られた情報のなかで判断を重ねていく作業です。何の型もなく進めると、検討する人によって着眼点がばらつき、抜け漏れも生じやすくなります。フレームワークを使う一番の目的は、この思考のばらつきを抑え、関係者が同じ土台の上で議論できるようにすることです。

具体的なメリットとしては、検討すべき項目が事前に決まっているため、抜け漏れのない検討がしやすくなる点が挙げられます。また、経営層や関係部署への説明資料としても使いやすく、社内合意を得るスピードを上げる効果も期待できます。加えて、フレームワークは経営・マーケティングの分野で広く紹介され、実務で使われてきた汎用的な型であるため、担当者が変わっても検討の質を一定水準に保ちやすいという利点もあります。

フレームワークを使う前に整理しておきたいこと

フレームワークはあくまで思考を整理するための道具であり、使う前に自社の状況をある程度把握しておく必要があります。具体的には、自社の強み・弱みや、新規事業がどのフェーズ(アイデア出し・検証・計画・実行のいずれか)にあるのかを把握しておくことが前提になります。

また、検討する事業領域やターゲットについても、仮でよいので方向性を決めておくと、フレームワークに記入する際の解像度が上がります。目的が曖昧なままフレームワークを使い始めると、項目を埋めること自体が目的化してしまいがちです。「何のためにこのフレームワークを使うのか」を先に言語化しておくことが、遠回りに見えて実は近道になります。

フェーズ別・新規事業フレームワークの逆引き早見表

フェーズ別に新規事業フレームワークを逆引きで選ぶ担当者の線画イラスト

新規事業のフレームワークは種類が多く、どの段階でどれを使うべきか迷いやすいものです。ここでは、自社が今どのフェーズにいるかを起点に、使うべきフレームワークを逆引きできるよう一覧表にまとめました。

検討フェーズ 目的 代表的なフレームワーク
アイデア創出 発想を広げる・既存アイデアを転用する オズボーンのチェックリスト、SCAMPER法、マンダラート
市場調査・環境分析 外部環境・競合・自社を俯瞰する PEST分析、3C分析、SWOT分析
顧客理解 ターゲットと立ち位置を定める STP分析、ポジショニングマップ
事業計画・ビジネスモデル構築 事業全体を1枚で可視化する ビジネスモデルキャンバス、リーンキャンバス、アンゾフの成長マトリクス
評価・改善 検討結果を継続的に磨き込む PDCAサイクル、OODAループ

この表はあくまで目安であり、実務では複数のフェーズを行き来しながら検討を進めることになります。次の章から、各フェーズで使うフレームワークを順番に解説します。

アイデア創出フェーズで使うフレームワーク

新規事業のアイデア創出フレームワークでブレインストーミングする担当者の線画イラスト

新規事業の出発点となるのが、アイデア創出のフェーズです。ゼロから発想するのは難しくても、既存の製品・サービスを別の切り口から見直す型を使うことで、アイデアの幅を広げやすくなります。

オズボーンのチェックリスト

オズボーンのチェックリストは、広告代理店の重役だったアレックス・オズボーン氏が考案したとされる発想法で、「転用」「応用」「変更」「拡大」「縮小」「代用」「置換」「逆転」「結合」という9つの視点から、既存の製品・サービスを見直していく手法です。

新規事業のアイデア出しの初期段階で、既存事業や他社事例を題材にしながら、それぞれの視点で「もし〜だったら」を問いかけていくと、単独では思いつきにくいアイデアが出やすくなります。ゼロから発想するより、既存の何かを起点にするほうが取り組みやすいという担当者にも向いています。

SCAMPER法

SCAMPER(スキャンパー)法は、オズボーンのチェックリストを整理・発展させた手法で、Substitute(代用)・Combine(結合)・Adapt(応用)・Modify(変更)・Put to other uses(転用)・Eliminate(削減)・Reverse(逆転)の頭文字を取った7つの質問で、既存アイデアを変形・発展させていきます。

オズボーンのチェックリストよりも項目数が絞られているため、短時間のワークショップやブレインストーミングと組み合わせやすいのが特徴です。既に候補となるアイデアがいくつかある段階で、それぞれをSCAMPERの7つの視点にあてはめて発展させると、検討の幅を効率よく広げられます。

マンダラート・ブレインストーミングでアイデアを広げる

マンダラートは、中心にテーマを置いて周囲の8マスに関連する要素を書き出す3×3のマス目を基本単位とし、必要に応じてその要素をさらに3×3のマスへ展開しながらテーマを細分化していく発想ツールです。1つのテーマから連想を広げていく過程で、当初は想定していなかった切り口が見つかることがあります。

ブレインストーミングと組み合わせる場合は、「批判をしない」「質より量を優先する」「自由奔放な意見も歓迎する」「他人の意見に相乗りしてよい」という基本ルールを事前にチーム内で共有しておくことが重要です。新規事業の検討を1人で抱え込まず、複数人でアイデアを広げるフェーズとして位置づけると、後工程の市場調査にもつながりやすくなります。

もっとも、アイデア出しの段階から社内のリソースだけで進めるのが難しいと感じる担当者も少なくありません。デジタル化を起点に新規事業の検討を進めている企業であれば、外部の壁打ち相手を交えて発想を広げるために、まずはお問い合わせするのも選択肢の一つです。

市場調査・環境分析フェーズで使うフレームワーク

新規事業の市場調査・環境分析フレームワークで外部環境を整理する担当者の線画イラスト

アイデアの方向性が見えてきたら、次はそのアイデアが市場でどう位置づけられるかを、外部環境や競合との関係のなかで検証していきます。この段階では、マクロ環境から自社の立ち位置まで、視野を広げながら絞り込んでいくフレームワークを使います。

PEST分析

PEST分析は、Politics(政治)・Economy(経済)・Society(社会)・Technology(技術)という4つの視点から、事業を取り巻くマクロ環境を分析する手法です。法改正や経済動向、社会的な価値観の変化、技術トレンドといった、自社ではコントロールできない外部要因を整理するのに向いています。

新規事業の検討では、市場調査の最初のステップとしてPEST分析を行い、事業機会や脅威となりうる外部環境の変化を洗い出しておくと、その後の3C分析やSWOT分析の精度が上がります。

3C分析

3C分析は、Customer(顧客・市場)・Competitor(競合)・Company(自社)という3つの視点から事業環境を整理する手法で、日本の経営コンサルティングの分野で広く使われてきました。

顧客のニーズ、競合の動向、自社の強みという3つを並べて見比べることで、自社が差別化できるポイントが見えやすくなります。マーケティング戦略や事業戦略を立案する際の土台として使われることが多く、後述するSTP分析やビジネスモデルキャンバスの前提情報としても活用できます。

SWOT分析・クロスSWOT分析

SWOT分析は、Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)の4象限で、内部要因と外部要因を整理する手法です。強み・弱みは自社の内部要因、機会・脅威は市場や競合といった外部要因にあたります。

4象限を整理しただけでは戦略の方向性までは見えてこないため、実務では「強み×機会」「弱み×脅威」のように要因を掛け合わせて戦略の選択肢を導き出す、クロスSWOT分析まで行うのが一般的です。新規事業の参入判断や戦略の方向性を決める段階で使うと効果的です。

なお、事業を検討する業種によって、外部環境の影響度は異なります。たとえばハウスメーカーや不動産・建設業のように許認可や法改正の影響を強く受ける業種では、PEST分析で洗い出した政治・制度面の変化を、SWOT分析の「機会」「脅威」に丁寧に反映させることが、精度の高い検討につながります。

顧客理解フェーズで使うフレームワーク

新規事業の顧客理解フレームワークでターゲットを絞り込む担当者の線画イラスト

市場環境を整理したら、次は「誰に」「どう届けるか」を明確にする段階です。ターゲットを絞り込み、自社の立ち位置を定めるフレームワークを見ていきます。

STP分析

STP分析は、Segmentation(市場の細分化)・Targeting(狙う市場の決定)・Positioning(自社の立ち位置の明確化)という3つのステップで構成される手法です。市場を年齢・地域・ニーズなどの切り口でセグメント化し、そのなかから自社が狙うべきターゲットを決め、競合との違いを踏まえて自社の立ち位置を定めていきます。

新規事業では、狙う市場を絞り込みすぎると事業規模が小さくなり、広げすぎると競合が多く差別化が難しくなるという、規模と競争優位性のバランスを取る判断が求められます。3C分析で整理した情報をもとにSTP分析を行うと、顧客戦略の骨格を組み立てやすくなります。

ポジショニングマップで自社の立ち位置を可視化する

ポジショニングマップは、価格帯や機能性といった2つの軸を設定し、その平面上に自社と競合を配置することで、立ち位置を可視化する手法です。競合が集中しているエリアを避け、自社の強みと顧客ニーズが重なる空白地帯を見つけることで、差別化ポイントの発見につながります。

軸の取り方次第で見え方が大きく変わるため、1つの軸だけで判断せず、複数の軸の組み合わせで検討してみることをおすすめします。

事業計画・ビジネスモデル構築フェーズで使うフレームワーク

新規事業の事業計画・ビジネスモデルキャンバスを検討する担当者の線画イラスト

顧客とポジショニングの方向性が固まったら、事業全体の構造を1枚に落とし込む段階に入ります。ここで使うフレームワークは、事業計画書やチーム内での議論の土台としても機能します。

ビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスは、スイスの研究者アレックス・オスターワルダー氏が、2000年から指導教員イヴ・ピニュール氏とともに構成要素の検討を重ね、2004年の博士論文で理論的な基盤をまとめたのち、2005年に9つの構成要素(顧客セグメント・価値提案・チャネル・顧客との関係・収益の流れ・主要なリソース・主要な活動・パートナー・コスト構造)からなる手法として発表したもので、事業全体を1枚のシートに可視化します。

要素同士のつながりを俯瞰できるため、事業計画書を作成する前段階の整理や、チームでの議論・合意形成のツールとしても広く使われています。9つすべてを一度に埋めようとせず、価値提案や顧客セグメントなど核となる要素から埋めていくと進めやすくなります。

リーンキャンバス

リーンキャンバスは、ビジネスモデルキャンバスを、検証を前提とした事業立ち上げ向けに再構成した派生版で、起業家のアッシュ・マウリャ氏が提唱しました。課題・ソリューション・主要指標・独自の価値提案・収益の流れといった項目で構成され、特に「課題」と「ソリューション」の整理に重点が置かれています。

新規事業がまだ検証段階にあり、スピード感を持って仮説と検証を繰り返したい場合は、要素の多いビジネスモデルキャンバスよりも、リーンキャンバスのほうが扱いやすいことがあります。

アンゾフの成長マトリクス

アンゾフの成長マトリクスは、経営学者イゴール・アンゾフ氏が提唱した手法で、「市場」と「製品」という2つの軸を、それぞれ「既存」「新規」に分けた4象限で成長戦略の方向性を整理します。既存市場×既存製品は「市場浸透」、新規市場×既存製品は「市場開拓」、既存市場×新規製品は「新製品開発」、新規市場×新規製品は「多角化」に分類されます。

ビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスが事業構造そのものを設計する手法であるのに対し、アンゾフの成長マトリクスは成長戦略の方向性を整理するための手法です。自社が検討している新規事業が、この4象限のどこに位置するかを把握しておくと、必要なリスク管理の水準や、社内で説明すべきポイントの見当がつけやすくなります。一般に、新規市場×新規製品にあたる多角化は、他の3つの象限と比べて不確実性が高くなる傾向があるとされています。

ビジネスモデルキャンバスとリーンキャンバスは似た印象を持たれがちですが、目的が異なります。両者の違いを簡単に整理すると、次のようになります。

比較項目 ビジネスモデルキャンバス リーンキャンバス
主な目的 事業全体の構造を俯瞰する 課題とソリューションの検証を早く回す
向いている段階 事業計画をある程度固める段階 アイデアを検証しながら進める初期段階
重点項目 顧客との関係・チャネルなど9要素全体 課題・ソリューション・主要指標

事業計画をある程度固めた段階になると、社内の検討だけでは客観性を保ちにくくなることもあります。組織づくりの観点も含めて、事業計画を第三者の視点でレビューしてほしい場合は、専門家に相談するのも選択肢の一つです。

事業評価・改善フェーズで使うフレームワーク

新規事業の評価・改善フレームワーク(PDCA・OODA)を回す担当者の線画イラスト

事業計画が形になったら、そこで検討を終えるのではなく、実行しながら評価・改善のサイクルを回していく段階に入ります。

PDCAサイクルとOODAループ

PDCAサイクルは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)という4つのステップを繰り返すことで、事業を継続的に改善していく手法です。統計学者のウォルター・シューハート氏が原型となる考え方を示し、エドワーズ・デミング氏がそれを発展させて普及させたとされています。計画に基づいて着実に実行と評価を積み重ねたい場面に向いています。

一方、OODAループは、Observe(観察)・Orient(状況判断)・Decide(意思決定)・Act(行動)という4ステップを高速で回す意思決定モデルで、アメリカ空軍の戦闘機パイロットだったジョン・ボイド大佐が1970年代に示した概念として知られています。計画を綿密に作り込む前に、まず観察と判断から動き出す発想のため、変化の速い新規事業の初期フェーズや、想定外の事態への対応に向いています。

どちらか一方を選ぶというより、事業計画がある程度固まった実行段階ではPDCA、市場環境が読みにくい検証段階ではOODAというように、フェーズに応じて使い分けるという考え方もあります。

新規事業アイデアの評価方法

複数のアイデアや事業案がある場合は、思いつきや声の大きさで決めるのではなく、市場性・実現可能性・自社適合性といった評価軸をあらかじめ設定し、それぞれの案を同じ基準で採点する仕組みを作っておくと、客観的な比較がしやすくなります。

評価軸の例としては、市場規模やニーズの強さといった「市場性」、必要な技術・人材・資金を自社で用意できるかという「実現可能性」、自社の既存事業や強みとの親和性を見る「自社適合性」などが挙げられます。評価結果は一度作って終わりにせず、検討が進むたびに見直し、次の意思決定につなげていくことが重要です。

複数のフレームワークを組み合わせる実務フロー

複数の新規事業フレームワークを組み合わせて検討する担当者の線画イラスト

ここまで紹介したフレームワークは、単独で使うよりも、フェーズに応じて組み合わせることで真価を発揮します。単独では見えない部分を、複数のフレームワークで補い合うイメージです。

PEST→3C→SWOT→STP→ビジネスモデルキャンバスの流れ

実務での代表的な組み合わせの一例として、まずPEST分析でマクロ環境を俯瞰し、その情報を踏まえて3C分析で顧客・競合・自社を整理します。次に、3C分析の結果をSWOT分析の材料として使い、強み・弱み・機会・脅威を4象限に整理したうえで、クロスSWOT分析で戦略の方向性を絞り込みます。

方向性が固まったら、STP分析でターゲットと自社の立ち位置を明確にし、最後にビジネスモデルキャンバスで事業全体を1枚に可視化する、という流れです。すべてのフレームワークを毎回この順番通りに使う必要はありませんが、検討が行き詰まったときに「どこまで整理できていて、どこが手つかずか」を確認する地図として活用できます。

一般化した事例で見る組み合わせの実際

たとえば、地域に根ざした事業を営む企業が、既存の顧客接点を活かした新しいサービスの立ち上げを検討するケースを想定してみます。まずPEST分析で、対象地域の人口動態や関連する法制度の動向を確認し、事業機会となりうる変化を洗い出します。

続いて3C分析で、想定する顧客層のニーズ、同様のサービスを提供する競合の状況、自社が持つ既存顧客との関係性や営業基盤を整理します。この結果をもとにSWOT分析を行うと、「既存の顧客基盤(強み)」と「新しいニーズの高まり(機会)」を掛け合わせた戦略の方向性が見えてきます。

最後に、ビジネスモデルキャンバスで、既存の顧客チャネルをどう新サービスに活用するか、収益モデルをどう組み立てるかを1枚に整理すれば、社内での説明資料としても使える状態に仕上がります。あくまで一般化したパターンですが、フレームワークを単発で使うのではなく、前工程の結果を次のフレームワークの入力情報として引き継いでいく感覚をつかんでいただければと思います。

新規事業の検討を進める過程で、デジタル化によって蓄積した顧客接点のデータを、新規事業のアイデア創出や市場調査の材料として活用できるケースもあります。社内のデジタル化から顧客接点の改革、そして新規事業へとつなげていく順序で検討を進めている企業であれば、フレームワークに投入する情報の質自体が変わってくることもあります。

こうした組み合わせ方や、どこまで自社で検討し、どこから外部の知見を借りるべきかの見極めは、事業フェーズごとに状況が異なるため、個別に検討したほうが早いこともあります。

フレームワークを使う時の注意点・活用のポイント

新規事業フレームワークを使う際の注意点を確認する担当者の線画イラスト

フレームワークは便利な道具ですが、使い方を誤ると、かえって検討のスピードを落としてしまうことがあります。最後に、実務でつまずきやすいポイントを整理します。

フレームワークを目的化しない

もっとも陥りやすい失敗が、フレームワークの空欄を埋めること自体が目的になってしまうことです。9つのマスや4つの象限をきれいに埋め終えても、そこから意思決定や行動につながらなければ、検討した意味は薄れてしまいます。フレームワークはあくまで意思決定を助ける手段であり、埋め終えた時点がゴールではないという意識を、チーム全体で共有しておくことが大切です。

現場の実態と乖離させない

フレームワークで整理した内容が、実際の顧客や現場の状況と乖離していないか、定期的に見直すことも欠かせません。特にSWOT分析やビジネスモデルキャンバスのように、一度整理すると更新されにくいフレームワークは、市場環境の変化に合わせて定期的に更新する運用を決めておくと、形骸化を防ぎやすくなります。フレームワークはあくまで思考を整理する手段であり、顧客インタビューや現場観察、簡易的な検証といった実際の情報収集と組み合わせて初めて、検討の精度が上がる点も押さえておきたいところです。

複数のフレームワークを取捨選択する判断基準

紹介したフレームワークをすべて使う必要はありません。検討する事業の規模や、検討にかけられる時間、社内でどこまで合意形成が必要かによって、使うべきフレームワークの数や深さは変わってきます。小規模な検討であれば3C分析とビジネスモデルキャンバスだけで十分なこともありますし、投資判断を伴う大きな検討であれば、PEST分析からアンゾフの成長マトリクスまで一通り使うほうが、社内説明の面でも安心感があります。

新規事業の検討に着手する前に、フレームワークを使い始める準備が整っているかを、簡単なチェックリストで確認しておくと、後戻りを減らせます。

  • 検討する事業領域・ターゲットの方向性を仮でも決めているか
  • 自社の強み・弱みをある程度把握しているか
  • 新規事業がどのフェーズ(アイデア出し・検証・計画・実行)にあるかを認識しているか
  • フレームワークを使う目的(誰に何を説明するためか)を言語化できているか
  • 整理した内容を誰がどう意思決定に使うかが決まっているか

新規事業フレームワークに関するよくある質問

Q1. 新規事業開発でよく使われるフレームワークは何ですか?

代表的なものとして、アイデア創出段階ではオズボーンのチェックリストやSCAMPER法、市場分析段階では3C分析やSWOT分析、事業計画段階ではビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスが挙げられます。検討フェーズに応じて使い分けるのが基本です。

Q2. 新規事業のアイデア出しにはどんな方法がありますか?

オズボーンのチェックリストやSCAMPER法のように、既存の製品・サービスを別の視点から見直す発想法のほか、マンダラートを使ってテーマを細分化する方法、複数人でのブレインストーミングなどがよく使われます。1人で考え込むより、複数の視点を組み合わせるほうがアイデアの幅は広がりやすくなります。

Q3. フレームワークはどの順番で使えばよいですか?

決まった正解はありませんが、目安としてはPEST分析で外部環境を俯瞰し、3C分析で顧客・競合・自社を整理し、SWOT分析で戦略の方向性を絞り込み、STP分析でターゲットを定め、最後にビジネスモデルキャンバスで事業全体を可視化する、という流れが実務の一例として挙げられます。検討の進み具合に応じて、行きつ戻りつしながら使うのが実務的です。

Q4. フレームワークのテンプレートはどこで入手できますか?

SWOT分析などは無料のテンプレートを見つけやすく、公的機関や各種オンラインツールでも入手できます。ビジネスモデルキャンバスについては提供元が公式サイトで利用条件を案内しているため、事前に確認したうえで使うと安心です。オンラインのホワイトボードツールにもテンプレートが搭載されているものがあり、チームで同時編集しながら埋めていく使い方も広まっています。自社の状況に合わせて項目をカスタマイズして使っても問題ありません。

独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営するJ-Net21などでも、新事業の検討に役立つ情報やツールが公開されているので、あわせて確認しておくとよいでしょう。

Q5. フレームワークを使っても新規事業のアイデアがまとまりません。どうすればよいですか?

フレームワークの空欄を埋めることに意識が向きすぎて、本来の目的である意思決定につながっていないケースがよくあります。一度、何のためにこのフレームワークを使っているのかに立ち返り、埋めた内容を誰にどう説明するのかを具体的に想定してみると、必要な情報とそうでない情報の区別がつきやすくなります。それでも整理がつかない場合は、社内だけで抱え込まず、第三者の視点を入れることも一つの方法です。

Q6. 新規事業のフレームワークは中小・中堅企業でも使えますか?

はい、フレームワーク自体は企業規模を問わず使えます。ただし中堅企業の場合、大企業のような専任の新規事業部門を持たないケースも多く、フレームワークを使いこなす経験やリソースが限られていることがあります。その場合は、すべての項目を自社だけで埋めようとせず、外部の伴走支援を部分的に活用するという選択肢もあります。

まとめ

新規事業フレームワークは、アイデア創出・市場調査・顧客理解・事業計画・評価改善という各フェーズに応じて使い分けることで、検討のスピードと精度を高めるツールです。フレームワークを埋めること自体を目的化せず、意思決定につなげるための手段として位置づけることが、活用のポイントになります。

TechHouse.Worksでは、出資(最大500万円)と継続的な伴走支援を組み合わせたスタートアップスタジオモデルとして、シード期向けのBoot UP!、アーリー期からイグジットまでを対象とするListing ONといったサービスを展開しています。

フレームワークを使って自社なりに検討を進めたものの、「この先をどう詰めればよいか分からない」「客観的な視点で壁打ちしてほしい」という段階に来られましたら、お気軽に無料相談を申し込むことをおすすめします。

なお、新規事業への挑戦や組織づくりに関するより深い思想・原論については、noteでも発信しています。