新規事業とは?中堅企業が取り組む進め方と成功のポイントをわかりやすく解説

新規事業に挑戦する中堅企業の担当者たちが伴走者と共に次の一歩を踏み出す様子を表した線画イラスト

「既存事業だけでは、この先の成長が見込めないかもしれない」「新規事業に挑戦したいが、何から手をつければいいのかわからない」——中堅企業で事業企画や経営企画を担う方から、こうした声を聞く機会が増えています。市場環境の変化が速くなるなか、次の一手として新規事業を検討する企業は年々増えており、それは決して大企業だけの話ではありません。

一方で、新規事業には既存事業とは異なる進め方やリスクがあり、思いつきや勢いだけで始めてしまうと、途中で頓挫してしまうケースも少なくありません。プロセスを正しく理解し、必要な人材・体制・資金の目安を把握したうえで着手することが、成功の確率を高める第一歩になります。

そこで本記事では、新規事業の基礎知識から、立ち上げの具体的なプロセス、進め方の選択肢、失敗しやすいパターン、業種別の論点まで、中堅企業の担当者が実務で使える情報を体系的に整理します。これから新規事業を検討し始める方も、すでに社内で動き出している方も、自社の状況と照らし合わせながら読み進めていただければと思います。

沖岡 豊大

沖岡 豊大

我々は誰もが挑戦の歩みを止めず、
失敗を糧に再チャレンジできる寛容な社会の実現を
目指して活動しています。

創業背景としては、エンジニア起業家の養成スクールで得た気づきがきっかけでした。自身のWhy meをプロダクトに落とし込み、投資家に対してピッチを行うのですが、卒業後も挑戦を”続けられる”人間がごく僅かだということを実感しました。志のある優秀な方でも、リスクを背負い、様々なハードシングスを乗り越えながら進み続けることは、実際には非常に困難です。そこで、起業家に同志として寄り添い、何度でも挑戦し続けられる環境を構築したいと思うようになり創業に至りました。
最終的にわたしもいち起業家として、TechHouse.Worksのサポートを得ながら、新たな事業を創るのが私の夢です。

目次

新規事業とは?基礎知識と既存事業との違い

新規事業の定義と既存事業との違いを整理して比較検討する担当者の線画イラスト

新規事業という言葉は日常的に使われますが、その定義や既存事業との違いを整理せずに議論を始めると、社内で認識のズレが生じやすくなります。まずは基本的な考え方を確認しておきましょう。

新規事業の定義と対象範囲

新規事業とは、企業がこれまで手掛けていなかった市場・顧客・製品・サービスの領域で、新たに事業を立ち上げる取り組みを指します。完全に新しい市場を切り拓く場合もあれば、既存の技術やノウハウを活かして新しい製品を開発する場合、既存の顧客基盤に新しいサービスを提供する場合など、その形態は幅広いです。

新規事業を考える際によく使われる整理の枠組みが「アンゾフの成長マトリクス」です。これは「市場(既存・新規)」と「製品・サービス(既存・新規)」の2軸で事業展開のパターンを4つに分類する考え方で、既存市場への新製品投入や、既存製品での新市場開拓なども新規事業の一形態として位置づけられます。自社がどのパターンに近いかを最初に整理しておくと、その後の戦略設計がしやすくなります。

新規事業と既存事業の違い

既存事業は、確立された市場・顧客・収益モデルを前提に、安定した収益の維持・拡大を目指す活動です。一方、新規事業は市場そのものが未成熟であったり、顧客のニーズが仮説の段階であったりすることが多く、不確実性が高いという特徴があります。

そのため、既存事業では精度の高い予算管理やKPI管理が重視されますが、新規事業では「小さく試して検証し、方向転換しながら前進する」という進め方が求められます。この違いを社内で共有できていないと、既存事業と同じ評価基準を新規事業に当てはめてしまい、芽が出る前に撤退判断を下してしまうことがあるため注意が必要です。

新規事業に関連する主な用語

新規事業の議論では、スタートアップの文脈で使われる用語が頻出します。代表的なものを押さえておくと、社内外の議論がスムーズになります。

PMF(プロダクトマーケットフィット)は、提供する製品・サービスが市場のニーズに合致し、顧客に受け入れられている状態を指します。MVP(最小実行可能製品)は、検証に必要な最小限の機能だけを備えた試作品のことで、少ないコストで顧客の反応を確かめる目的で使われます。POC(概念実証)は、アイデアや技術が実現可能かどうかを小規模に検証する取り組みです。

事業の成長段階を示す言葉として、シード期(事業の種を育てる初期段階)、アーリー期(事業が形になり始める段階)、レイター期(事業が安定・拡大する段階)があります。また、ピボットは事業の方向性を大きく転換すること、バーンレートは資金がどのくらいのペースで減っていくかを示す指標、イグジットは投資家が投資を回収する出口戦略(M&Aや株式公開など)を指します。エクイティ(株式による資金調達)やバリュエーション(企業価値評価)も、外部資金を活用する場合には理解しておきたい用語です。

なぜ今、中堅企業に新規事業が求められるのか

市場環境の変化とDXの流れを見渡し新規事業の必要性に気づく中堅企業担当者の線画イラスト

新規事業への取り組みは、多くの企業にとって選択肢の一つから必須の経営課題へと位置づけが変わってきています。その背景を整理します。

市場環境の変化と既存事業の限界

人口構成の変化や消費者ニーズの多様化、業界を越えた競争の激化により、既存事業の市場そのものが縮小・変化していく可能性は、多くの業界で共通の課題になっています。特に地域に根ざした事業を展開する中堅企業にとっては、既存の商圏・顧客層だけに依存し続けることのリスクが徐々に大きくなっています。

中小企業庁「中小企業白書(2017年版)」では、2016年度時点で実施された調査をもとに、新事業展開に取り組んだ中小企業のうち「成功した」と自己評価した割合が3割程度にとどまるという分析が示されています(出典:中小企業庁「中小企業白書2017年版」第2部第3章「新事業展開の成否の実態」)。やや古い時点の調査であるため、現在の一律の成功率としてそのまま当てはめるのではなく、あくまで参考値として捉えるのが適切です。いずれにせよ、新規事業は取り組めば必ず成功するものではなく、相応の準備とプロセスが求められる挑戦だといえます。

DXの進展と新規事業の関係

新規事業への取り組みは、DX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術を活用して事業やビジネスモデルを変革すること)の流れとも密接に関わっています。経済産業省「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025」(2025年3月)では、既存の業務データを活用して新たなサービスを開発した事例や、蓄積したデータをもとに新規のシステム開発につなげた事例が紹介されており、デジタル化への取り組みが新規事業のヒントになり得ることが示されています。

実務上の進め方として、社内の業務プロセスをデジタル化し、そこで得られる顧客接点のデータを蓄積・分析できる基盤を整えたうえで、そのデータを新規事業の着想や検証に活かすという方法は有力な選択肢の一つです。ただし、この順序が唯一の正解というわけではなく、新規事業の仮説検証を先行させながら、並行して必要な範囲のデジタル化を進める企業も見られます。自社の状況に応じて、どちらを起点にするかを判断することが重要です。

中堅企業ならではの新規事業への期待

売上規模が数十億円以上の中堅企業では、既存事業で一定の経営基盤があるからこそ、新規事業に投じられるリソース(資金・人材・既存の顧客基盤やブランド力)を一定程度確保しやすいという強みがあります。一方で、意思決定のスピードや、失敗を許容する組織文化の醸成が課題になりやすいことも実務上よく指摘される点です。この強みと課題の両方を踏まえたうえで、自社に合った進め方を選ぶことが重要になります。

新規事業立ち上げの基本プロセス

新規事業の進め方は企業によって異なりますが、共通して踏むべき基本的なプロセスがあります。ここでは代表的な流れを4段階に整理して紹介します。

アイデアの発掘と仮説構築

最初のステップは、事業アイデアの発掘です。社内の課題やノウハウを起点にする方法、顧客や取引先から得た声を起点にする方法、業界のトレンドや技術動向を起点にする方法など、アプローチは複数あります。重要なのは、思いついたアイデアをそのまま形にするのではなく、「誰の、どんな課題を解決するのか」という仮説の形に整理することです。この段階で仮説が曖昧なままだと、後工程の検証がぶれてしまいます。

市場調査と顧客ニーズの検証

仮説を立てたら、実際に市場や顧客に当てて検証する段階に入ります。競合分析を行い、既に同様のサービスが存在するか、どのような差別化が可能かを確認します。同時に、ターゲット顧客へのインタビューやアンケートを通じて、仮説として立てた課題が実在するかを確かめます。この段階でMVPを用意し、実際に顧客に使ってもらいながらPMFの状態に近づけていく進め方が一般的です。

事業計画の策定と資金・体制の確保

検証を経て仮説の精度が高まったら、事業計画として具体化します。収益モデル、必要な初期投資、想定される期間、必要な人材・体制を整理し、社内の承認を得るための計画書を作成します。この段階で、社内リソースだけで進めるか、外部の資金や専門家の力を借りるかという進め方の選択も検討することになります。

実行・検証・改善のサイクル

計画が承認されたら、実際に事業を立ち上げ、運営を開始します。ただし、立ち上げた後も一度きりの実行で終わるわけではありません。実際の運営データや顧客の反応をもとに、KPIの達成状況を確認し、必要に応じて商品・サービスや戦略を改善していくサイクルを繰り返します。あらかじめ「どの指標がどの水準を下回ったら撤退・方向転換を検討するか」という撤退基準を決めておくことも、リソースを無駄に使い続けないための重要なポイントです。

新規事業を進める3つのアプローチ

内製・外部コンサル・スタートアップスタジオの3つの進め方を比較検討する担当者の線画イラスト

新規事業は自社だけで完結させる必要はありません。社内の状況やリソースに応じて、進め方には主に3つの選択肢があります。それぞれの特徴を比較しながら、自社に合う方法を検討してみましょう。

進め方特徴向いているケース
内製で進める社内の人材・予算のみで推進する。ノウハウが社内に蓄積されやすい新規事業専任の人材や過去の経験がすでに社内にある場合
外部コンサルティングを活用する事業計画の策定や市場調査など、特定の工程を外部の専門家に依頼する特定の知見・スキルが社内に不足している場合
スタートアップスタジオ等の伴走型支援を活用する出資と実務支援を組み合わせるモデルなど、支援事業者が継続的に伴走するゼロから体制を作る余裕がなく、資金と実務の両面で支援を受けたい場合

内製で進める場合、事業への理解や思いが社内に根付きやすく、成功すればノウハウがそのまま組織の資産になります。ただし、新規事業に不可欠な市場検証のスキルやスピード感が社内に不足している場合、時間がかかりすぎたり、判断を誤りやすくなったりするリスクがあります。

外部コンサルティングの活用は、事業計画の策定や市場調査など、特定の工程だけを補いたい場合に適した選択肢です。一方で、あくまで助言が中心となるため、実行フェーズの推進力は自社で担う必要があります。

「スタートアップスタジオ」と呼ばれる支援モデルには、事業創出そのものを担うもの、共同創業に近い形で関わるもの、出資と実務支援を組み合わせて継続的に伴走するものなど、複数の形態があります。TechHouse.Worksのように、出資(資金提供)と実務支援を組み合わせて、事業の立ち上げから運営までを継続的に伴走するモデルもその一例です。単発のコンサルティングと異なり、資金面と実務面の両方を長期にわたって支援してもらえる点が特徴で、社内に新規事業の専任チームを一からつくる余裕がない中堅企業にとって、選択肢の一つになり得ます。支援モデルによって重視する軸(思想的な相性を重視するか、規模やスピードを重視するかなど)は異なるため、自社の考え方に合う支援先を見極めることが大切です。

新規事業の推進体制を社内でどう作るか、あるいは外部との連携をどう組み合わせるかを検討する際は、専門家に相談しながら整理するのも一つの方法です。TechHouse.Worksでは、出資と実務支援を組み合わせた伴走型の支援モデルを軸に、中堅企業が推進する新規事業の相談にも応じています。進め方の選択に迷う場合は、相談してみるのも選択肢の一つです。

新規事業に取り組むメリット

新規事業への挑戦から得られる新たな可能性と成長を実感する担当者の線画イラスト

リスクを伴う新規事業ですが、取り組むことによって得られるメリットも明確に存在します。代表的な3つを紹介します。

新たな収益源の確立

既存事業の市場が成熟・縮小していく中で、新規事業は新たな収益源を生み出す手段になります。新規事業が軌道に乗れば、事業ポートフォリオを多角化することで、経営上のリスクを分散させることにつながります。ただし、この効果は事業設計次第という側面もあります。新規事業が既存事業とかけ離れすぎると、狙った分散効果が得られないまま管理コストだけが増え、かえって管理負荷が高まることもあるため、既存事業とのシナジーを踏まえた事業設計が重要です。

既存事業とのシナジー

新規事業で得た顧客接点やデータ、技術、ノウハウが、既存事業の改善や新たな価値提供につながることがあります。例えば、新規事業で構築したデジタルの顧客接点が、既存事業の営業活動やマーケティングにも活用できるといったケースです。新規事業と既存事業を独立したものとしてではなく、互いに補完し合う関係として設計することで、投資対効果を高めやすくなります。

人材育成と組織文化の醸成

新規事業の推進は、担当するメンバーにとって大きな成長機会になります。不確実性の高い環境で仮説を立て、検証し、判断していく経験は、既存事業の運営だけでは得られにくいスキルです。また、新規事業への挑戦を組織として後押しする姿勢そのものが、「挑戦を許容する文化」を社内に根付かせるきっかけにもなります。

新規事業が失敗しやすいパターンとリスク

新規事業で見落とされがちな失敗パターンとリスクを慎重に確認する担当者の線画イラスト

新規事業への挑戦には相応のリスクが伴います。見落とされがちな失敗パターンを事前に理解しておくことで、同じ轍を踏むリスクを減らすことができます。

市場調査不足・顧客ニーズの誤解

最も多い失敗パターンの一つが、十分な市場調査を行わずに「良いはずだ」という思い込みで事業を進めてしまうケースです。社内の視点だけで完成度を高めても、実際の顧客ニーズと合致していなければ市場に受け入れられません。仮説を立てたら、必ず顧客や市場に当てて検証するプロセスを省略しないことが重要です。

リソース配分・資金計画の甘さ

新規事業は、市場調査のやり直しや追加の技術検証、業態によっては想定していなかった営業活動や導入支援の発生など、当初の計画にない工数・コストが検証段階で生じやすく、想定していたよりも時間とコストがかかることが少なくありません。初期投資の見積もりが楽観的すぎると、事業が軌道に乗る前に資金が尽きてしまうリスクがあります。想定される期間や投資規模には、あらかじめ幅を持たせておくことが望ましいでしょう。

撤退基準を決めていない

新規事業の立ち上げ段階で、うまくいかなかった場合の撤退基準を決めていないケースも多く見られます。撤退基準がないまま進めてしまうと、成果が出ないままリソースを投じ続けてしまい、他の事業機会を逃す結果につながりかねません。事業計画の策定時点で「どのKPIがどの水準を下回ったら見直すか」を数値で決めておくことが、リスク管理の基本になります。

新規事業の立ち上げに必要な人材・社内体制

新規事業を推進するチームの体制づくりについて話し合う担当者たちの線画イラスト

新規事業の成否は、進め方や資金だけでなく、それを推進する人材と体制に大きく左右されます。

必要なスキルセット

新規事業の推進には、市場調査や分析を行う情報収集力、顧客の課題を見極める課題発見力、仮説を筋道立てて検証するロジカルシンキング、社内外の関係者を説得するプレゼンテーション力、複数の工程を並行して進めるプロジェクトマネジメント力など、既存事業の運営とは異なるスキルセットが求められます。これらすべてを一人で担う必要はなく、チームとして補い合える構成にすることが実務上のポイントです。

推進体制の作り方

新規事業を既存事業の部署の中で兼務として進めると、日々の業務に埋もれてしまい、スピード感が失われがちです。そのため、専任のチームを設ける、あるいは既存組織から一定の距離を置いた「出島組織」(本体組織のルールを一部緩和しつつ、新規事業に適した意思決定権限とガバナンスを別途設計する組織形態)を設置する企業も増えています。出島組織は完全に本体から切り離せばよいというものではなく、本体との連携・報告ラインをどう設計するかが機能させるうえでのポイントになります。社内でイントラプレナー(社内起業家)としての役割を担える人材を見極め、権限とリソースを与えることも、推進体制づくりの重要な要素です。

社内リソースで不足する部分をどう補うか

新規事業に必要なスキルセットが社内にすべて揃っているとは限りません。不足する部分を補う選択肢としては、外部コンサルティングの活用に加えて、越境人材(所属組織や業界の枠を越えて他社・他領域で経験を積み、その知見を持ち込む人材)を受け入れる方法もあります。個人が副業や兼業として携わる場合もあれば、出向・兼務・共同プロジェクトへの参加という形で企業同士が制度として連携する場合もあり、関わり方は多様です。前者のような個人の自発的な意思による関わり方を「個人越境」、後者のような企業が組織的に導入する関わり方を「組織越境」と呼びます。社内に閉じない形で人材を確保することで、専任チームをフルタイムで新規採用するよりも柔軟にスキルを補完できる場合があります。TechHouse.Worksでも、こうした越境人材を中堅企業の新規事業に橋渡しする「Beyond Borders」というサービスを提供しており、人材面での選択肢を検討する際の参考としてご活用いただけます。

新規事業のコスト・リソース感

新規事業の投資規模と期間の目安を検討する担当者の線画イラスト

新規事業を検討する際、多くの担当者が気にするのが投資規模と期間の目安です。業種やビジネスモデルによって大きく異なりますが、社内で計画を立てる際の参考として、一般的な幅を紹介します。

投資規模の目安

新規事業の初期投資は、検証段階と本格展開段階とで規模感が大きく異なります。IT系のサービスであれば、社内の既存の人材・システム・顧客基盤といったアセットを活用できる場合、PoCやMVP開発といった検証段階は比較的少額の範囲で始めやすい一方、設備投資を伴う事業や本格展開の段階では相応の資金が必要になります。社内予算だけで進める場合と、外部からの出資や融資を組み合わせる場合とで、必要な自己資金の規模も変わってきます。事業計画の初期段階では、複数のシナリオ(最小構成での検証から本格展開まで)で投資規模を幅を持って見積もっておくと、資金計画の精度が上がります。

期間の目安

必要な期間は工程によって幅があります。一般に、アイデアの検討からPoC(概念実証)による初期検証までの短期の検証フェーズと、本格展開まで含めた長期の事業化フェーズとでは、必要な期間が大きく異なります。目安として、初期検証は数週間から数ヶ月程度で進むケースもあれば、本格展開まで含めると事業の複雑さによっては半年から1〜2年程度かかることもあります。特に、市場調査や顧客検証のプロセスを丁寧に行うほど、立ち上げまでの期間は長くなる傾向があります。一方で、検証を省略して急いで市場に出すと、後から手戻りが発生し、結果的に時間がかかってしまうこともあるため、期間短縮とプロセスの質のバランスを意識することが大切です。

社内工数の目安

新規事業の推進には、専任メンバーだけでなく、既存事業部門からの協力や経営層の意思決定への関与も必要になります。特に立ち上げの初期段階では、経営層が定期的に進捗を確認し、必要な判断を素早く行える体制を整えておくことが、事業のスピード感を保つうえで重要です。

業種別に見る新規事業の論点

ハウスメーカー・不動産業や建設業など業種別の新規事業の論点を検討する担当者の線画イラスト

新規事業の基本的な進め方は業種を問わず共通していますが、業種特有の事情によって重視すべき論点は変わってきます。ここでは、中堅企業が多く分布するハウスメーカー・不動産業、建設業を例に、特有の論点を整理します。

業種新規事業の特有の論点検討の方向性の例
ハウスメーカー・不動産業顧客との関係が長期(購入後も続く)ため、既存の顧客接点データを新規事業に活かせる余地が大きい既存顧客向けの新サービス開発、顧客接点データの活用による新規事業の着想
建設業現場ごとの個別性が高く、標準化・デジタル化が新規事業の前提になりやすい施工データやノウハウを活用したサービス化、デジタル化を土台にした事業展開

ハウスメーカー・不動産業では、住宅の購入・入居後も長期にわたって顧客との関係が続くという特徴があります。この関係性の中で蓄積される顧客接点のデータやノウハウは、新規事業の着想源として活用できる余地が大きい領域です。既存の顧客基盤を起点に新しいサービスを検討することで、ゼロから市場を開拓するよりも早い段階で顧客ニーズを検証できる可能性があります。

建設業では、現場ごとの個別性が高く、業務の標準化やデジタル化がまだ発展途上の企業も少なくありません。この場合、新規事業を検討する前段階として、まず既存業務のデジタル化を進め、そこで得られるデータや知見を新規事業の土台にするという順序も、有力な選択肢の一つになります。

業種が異なっても、「既存事業で蓄積した強み(顧客基盤・データ・ノウハウ)をどう新規事業に転用するか」という視点は共通の論点です。自社の業種特有の事情を踏まえつつ、この視点で自社の強みを棚卸しすることが、新規事業のアイデア発掘における出発点になります。

新規事業を始める前のチェックリスト

新規事業に着手する前にチェックリストで抜け漏れを確認する担当者の線画イラスト

新規事業に着手する前に、社内で以下の点を確認しておくことをお勧めします。抜け漏れがないか、着手前に一度整理してみてください。

  • 新規事業のアイデアが「誰の、どんな課題を解決するのか」という仮説の形に整理されているか
  • 想定する市場・顧客に対して、実際にヒアリングや調査を行い、仮説を検証したか
  • 初期投資・想定期間について、複数のシナリオで幅を持った見積もりができているか
  • 推進体制(専任者・チーム)と、経営層が意思決定に関与するタイミングが明確になっているか
  • 撤退基準(どの指標がどの水準を下回ったら見直すか)を事前に決めているか
  • 社内リソースで不足するスキル・知見をどう補うか(外部支援・人材活用等)の方針があるか

新規事業に関するよくある質問

Q1. 新規事業の成功率はどのくらいですか?

中小企業庁「中小企業白書(2017年版)」では、2016年度時点の調査をもとに、新事業展開に取り組んだ中小企業のうち「成功した」と回答した割合が3割程度にとどまるという分析が示されています。業種や進め方によって差はあるうえ、やや古い時点の調査であるため現在の一律の水準として断定はできませんが、参考値としては、新規事業は取り組めば必ず成功するものではなく、市場調査や検証のプロセスを丁寧に行うことが成功率を高める鍵になるといえます。

Q2. 新規事業を始めるための初期投資はどのくらい必要ですか?

業種やビジネスモデルによって大きく異なります。IT系のサービスであれば、PoCやMVP開発といった検証段階は比較的少額から始められますが、設備投資を伴う事業や本格展開の段階では相応の資金が必要です。まずは最小限の構成で検証し、その結果を見て本格投資の規模を判断するという段階的なアプローチが、資金リスクを抑える一つの方法です。

Q3. 新規事業と既存事業の違いは何ですか?

既存事業は確立された市場・顧客基盤を前提に安定した収益を目指す活動であるのに対し、新規事業は市場や顧客ニーズが仮説の段階にあることが多く、不確実性が高いという違いがあります。そのため、新規事業では既存事業とは異なる評価基準(小さく試して検証を重ねる進め方)が求められます。

Q4. 新規事業立ち上げにはどのくらいの期間がかかりますか?

工程によって幅があります。一般に、短期の初期検証(PoCまで)と長期の事業化(本格展開まで)とでは必要な期間が大きく異なり、初期検証は数週間から数ヶ月程度で進むケースもあれば、本格展開まで含めると事業の複雑さによっては半年から1〜2年程度かかることもあります。市場調査や顧客検証を丁寧に行うほど期間は長くなる傾向がありますが、検証を省略すると後から手戻りが発生しやすくなるため、期間短縮とプロセスの質のバランスを考えることが大切です。

Q5. 新規事業を社内だけで進めるのは可能ですか?

可能ですが、市場検証のスキルやスピード感、専任人材の確保などが社内で十分に整っているかによって難易度が変わります。社内のリソースだけで進める、外部コンサルティングで一部の工程を補う、スタートアップスタジオのように資金と実務の両面で継続的な支援を受けるなど、複数の選択肢の中から自社の状況に合った進め方を選ぶことが現実的です。

まとめ

新規事業は、既存事業の成長が鈍化する局面において、企業の持続的な成長を支える重要な選択肢です。一方で、中小企業庁のデータが示すように、取り組んだからといって必ず成功するとは限らず、アイデアの発掘から検証、事業計画の策定、実行・改善のサイクルまでを丁寧に踏むことが成功率を高める前提になります。特に、市場調査を省略しないこと、投資規模と期間に幅を持った見積もりをしておくこと、撤退基準をあらかじめ決めておくことは、リスクを抑えるうえで欠かせないポイントです。

進め方についても、内製・外部コンサルティングの活用・スタートアップスタジオとの共創という複数の選択肢があり、自社のリソースや状況に応じて選ぶことができます。TechHouse.Worksでは、シード〜アーリー期のスタートアップ向けに、最大500万円のマイクロ出資と3か月の伴走トライアルを組み合わせた「Boot Up!」を、アーリー期からEXITまでのスタートアップ向けにスケール支援を行う「Listing On!」を提供しています。これらはスタートアップ向けの制度であり、中堅企業がそのままBoot Up!やListing On!の対象になるわけではありませんが、出資と実務の両面から継続的に伴走するという同じ考え方に基づき、中堅企業の新規事業についても個別にご相談をお受けしています。支援者としてではなく、当事者として苦楽を共にする姿勢を大切にしています。「自社の新規事業を、どんな形で、誰と一緒に進めるか」を検討している方は、お気軽にご相談ください。

なお、挑戦する人や組織に伴走するという考え方や、組織変革に関するより深い発信については、公式noteでも行っています。