経営課題とは?定義・一覧から見つけ方、優先順位のつけ方、解決策まで【2026年版】

経営課題の見つけ方と優先順位のつけ方を、経営層が話し合って整理するイメージ

「経営会議で『いま、うちの経営課題は何か』と問われ、即答できなかった」「課題は山ほどあるのに、何から手をつけるべきか決められない」。年度方針や中期経営計画の検討が近づくたびに、こうした悩みを抱える経営層や事業責任者は少なくありません。

課題を挙げること自体は難しくありません。人手が足りない、売上が伸びない、システムが古いと並べていくうちに、十数項目のリストができあがります。ところが、それは症状の羅列にとどまりがちで、本当に取り組むべき課題がどれなのかは見えてきません。

経営環境も大きく動いています。賃上げの継続や人手不足の深刻化など、現状維持のままでは立ち行かなくなる場面が増えています。課題の整理を後回しにすると、対処の順序を誤り、限られた人材と予算を分散させてしまう恐れがあります。

そこで本記事では、経営課題の定義と「問題」との違いから、代表的な課題の一覧、公的調査で見る近年のテーマ、自社の課題を見つける4ステップ、診断チェックリスト、解決の進め方までを、中堅・中小企業の実務目線で整理します。企業規模や業種によって課題の現れ方は異なるため、中小企業から中堅企業まで幅広く使える考え方を中心にまとめています。読み終えるころに、課題候補を3つ程度に絞り、着手の順番を決められる状態を目指します。

なお、本記事で「中堅企業」と呼ぶのは、売上50億円以上の企業です。公的制度・統計上の企業区分とは異なる場合があります。

沖岡 豊大

沖岡 豊大

我々は誰もが挑戦の歩みを止めず、
失敗を糧に再チャレンジできる寛容な社会の実現を
目指して活動しています。

創業背景としては、エンジニア起業家の養成スクールで得た気づきがきっかけでした。自身のWhy meをプロダクトに落とし込み、投資家に対してピッチを行うのですが、卒業後も挑戦を”続けられる”人間がごく僅かだということを実感しました。志のある優秀な方でも、リスクを背負い、様々なハードシングスを乗り越えながら進み続けることは、実際には非常に困難です。そこで、起業家に同志として寄り添い、何度でも挑戦し続けられる環境を構築したいと思うようになり創業に至りました。
最終的にわたしもいち起業家として、TechHouse.Worksのサポートを得ながら、新たな事業を創るのが私の夢です。

経営課題とは?意味と「問題」「目標」との違い

経営課題の定義と、目指す姿と現状のギャップを確かめ合うビジネスパーソンのイラスト

「経営課題」という言葉は日常的に使われる一方で、人によって指す範囲が異なりがちです。まず定義をそろえたうえで、混同されやすい「問題」「目標」との違いと、課題が生まれる背景を整理します。

経営課題の定義:目指す姿と現状のギャップ

本記事では、経営課題を、企業が目指す状態(ビジョンや経営目標)と現状とのギャップを埋めるために、解決すべき重要なテーマと捉えます。法律上の定義があるわけではなく、経営実務での一般的な捉え方です。課題は「あるべき姿」を基準にして初めて定まる点が、単なる不満や不具合の指摘との違いです。

たとえば「3年後に新規事業を第二の柱に育てる」という目標があれば、既存事業の利益水準や、新規事業に割ける人員と現状との差が課題の出発点になります。目標が曖昧なまま課題を探すと、目についた不具合を順に並べるだけになり、優先順位もつけられません。

また、経営課題は全社の目標達成に大きく影響し、経営層の判断や資源配分を要するテーマを指すのが一般的です。部門や現場の改善事項とは粒度が異なるため、その整理の仕方は後述の階層分解で扱います。

「問題」「課題」「経営目標」の違い

混同されやすい言葉を、本記事での区別として次の表で整理します。企業やコンサルティングの手法によって用語の定義は異なるため、社内で使うときは意味をそろえておくと誤解を防げます。

用語 意味 例
経営目標 企業が到達したい状態 新規顧客からの受注比率を高める
問題 すでに起きている望ましくない状態 月次の粗利率が計画を下回っている
課題 問題を解消し、目標に近づくために取り組むべきこと 見積もり段階で原価を把握する仕組みをつくる
経営課題 課題のうち、全社の目標に大きく影響し、経営層の判断を要するもの 人手不足を前提に、事業の進め方そのものを組み替える

問題は「起きていること」、課題は「これからやること」という向きの違いがあります。問題を見つけただけでは動き出せず、課題の形に言い換えて初めて、担当者や期限を決められます。

見落としやすいのは、問題の裏返しをそのまま課題にしてしまう点です。「人が足りない」は問題であり、「採用で補うのか、業務を減らすのか、外部の人材を迎えるのか」を決めることが課題です。

経営課題が生まれる理由と放置した場合のリスク

経営課題が生まれる背景は、大きく3つあります。市場・規制・技術といった外部環境の変化、成長段階の移行に伴う組織や仕組みの限界、そして人材や意思決定の癖といった内部要因の蓄積です。

放置した場合のリスクは、時間とともに課題が複合化することです。たとえば老朽化したシステムを放置すると、保守に人手を取られて新しい取り組みに回せなくなり、競争力の低下と人材の流出が重なる、といった連鎖が起こります。

こうした構造的な課題は、現場の努力だけでは解消しにくく、経営層が方針を決めて資源を配分する必要があります。

企業が直面する代表的な経営課題の一覧と具体例

経営課題の代表的な分類を整理して見比べるビジネスパーソンのイラスト

経営課題は企業ごとに異なって見えても、いくつかの型に整理できます。ここでは代表的な8分類を一覧で示し、そのうえで、現場の症状から逆引きする早見表と、課題の粒度をそろえる階層分解を紹介します。

収益・人材・組織・DX・資金など経営課題8分類

代表的な経営課題を、8つの分類で整理します。公的な標準分類ではなく、経営実務で検討しやすいよう本記事独自にまとめたものです。自社に当てはまりそうな行から読み、典型的なテーマと見るべき指標を確認してください。

分類 典型的なテーマ 放置した場合の影響 見るべき指標
収益性 粗利率の低下、価格設定の見直し遅れ、不採算事業の温存 投資に回せる資金が細る 粗利率、営業利益率
人材 採用難、離職、育成の遅れ、ノウハウの属人化 受注機会の損失、品質のばらつき 離職率、欠員数、採用充足率
組織 意思決定の遅れ、部門間の分断、評価制度の不整合 決めた施策が実行されない 決裁に要する日数、従業員アンケート
DX・デジタル化 老朽化したシステム、紙や表計算での運用、データの分散 業務工数の増加、判断の遅れ 手作業の工数、システム保守費の比率
資金・コスト 資金繰りの逼迫、原材料・外注費・人件費の上昇 必要な投資を実行できない 手元資金の月数、固定費率
事業基盤・承継 主力事業の成熟、特定顧客への依存、後継者不在 事業継続そのものが揺らぐ 上位顧客への売上依存度、後継候補の有無
顧客・マーケティング 新規顧客獲得の停滞、顧客接点の分断、リピート率の低下 売上の頭打ち 問い合わせ件数、成約率、リピート率
リスク・法令対応 法令対応、情報セキュリティ、調達網の途絶 信用の毀損、事業の中断 インシデント件数、監査での指摘件数

8分類は独立しているわけではなく、互いに影響し合います。たとえばデジタル化の遅れは工数の増加を通じて収益性に、人材の不足は顧客対応の質に響きます。こうした連鎖の見方は、後の章で取り上げます。

DX(デジタル技術を活用して、業務や事業のあり方そのものを変える取り組み)の課題は、ツールを導入しただけで解決したつもりになりやすい領域です。デジタル化の進め方を体系的に確認したい場合は、DXに関する解説記事も参考になります。

DXや組織の課題を自社だけで整理するのが難しいときは、専門家に相談するのも一つの方法です。TechHouse.Worksでは、デジタル化から顧客接点の改革、新規事業へと順序立てて進めるDXの伴走支援を行っています。

現場の症状から逆引きする早見表

課題は、抽象的な言葉よりも、現場で見える症状として先に現れます。次の表は、よくある症状から、疑われる経営課題と最初に確認したいデータを引けるようにしたものです。

現場で見える症状 疑われる経営課題 まず確認するデータ
離職率の上昇、欠員が埋まらない 人材・組織 退職理由、部署別の離職率、採用充足率
粗利率の低下、値引きの常態化 収益性 案件別の粗利、見積もり時の原価と実績の差
月次の締め処理が遅い、集計が手作業 DX・業務プロセス 締めにかかる日数、手作業の工数
問い合わせや来場の減少 顧客・マーケティング 流入経路別の件数、商談化率、失注理由
会議が多いのに物事が決まらない 組織・意思決定 会議体の数と目的、決裁にかかる日数
受注は増えているのに利益が残らない 収益性・資金 案件別損益、資金繰り表、外注費の比率
特定の担当者に業務が集中している 人材・事業基盤 業務ごとの担当者、引き継ぎ資料の有無

一つの症状が複数の課題の入口になる点には注意が必要です。たとえば粗利率の低下は、価格設定の問題かもしれませんが、原価管理の甘さや、見積もり担当者の属人化が原因のこともあります。

症状は課題そのものではなく、課題を探す手がかりとして使います。表で当たりをつけたら、確認するデータを実際に見にいき、仮説を検証する流れが基本です。

経営・部門・現場の3階層に分解して粒度をそろえる

課題の議論が噛み合わない原因の一つが、粒度の不一致です。経営層は「収益構造の立て直し」を語り、現場は「見積書の書式の不統一」を語っているのに、同じ土俵で優先順位を比べてしまうと、判断を誤ります。

そこで、経営目標から現場の行動までを3つの階層に分解します。特定の規格や公的制度ではなく、本記事で提案する整理方法です。同じテーマを階層ごとに言い換えると、誰が何を担うのかが明確になります。

階層 主な担い手 課題の例(収益性のテーマ)
経営課題 経営層 主力事業の収益構造を、価格と原価の両面から立て直す
部門課題 部門長 営業部門で、案件ごとの粗利を見積もり段階で把握する
現場課題 担当者・チーム 見積書の原価入力の書式を統一し、実績との差を毎月確認する

経営課題を部門課題へ、部門課題を現場課題へと分けていくと、目標とのつながりが見える形になります。現場課題をいくら積み上げても経営課題には届かないことがあるため、上から下へ分解する向きで整理するのが基本です。

経営課題ランキングの読み方と、公的調査で見る近年のテーマ

中小企業白書など公的調査から近年の経営課題のテーマを読み解くイラスト

「経営課題ランキング」は、検索でも関心の高いテーマです。ただし順位は、調査によって変わります。読み方を押さえたうえで、近年の公的調査で強調されているテーマと、規模・成長段階による課題の違いを整理します。

中小企業の経営課題は?ランキングを読むときの注意点

中小企業の経営課題を調べるときの代表的な出典が、中小企業庁が毎年まとめる「中小企業白書」です。政府統計や独自のアンケート調査をもとに、経営環境の変化や課題、有効な取り組みが分析されています。

ただし、ランキングの順位や割合は、調査の対象(企業規模・業種)、設問の形式(複数回答か、最も重要なものを1つ選ぶ形式か)、調査の時期によって変わります。別の調査の数値と単純に比べたり、順位だけを取り出して自社に当てはめたりするのは避けたい点です。

順位そのものよりも、実務では次の2点を読み取るほうが役に立ちます。上位に繰り返し並ぶ常連のテーマと、その年の白書が強調している論点です。次の項で、近年の白書が取り上げる論点を見ていきます。

現在の経営課題は?近年の白書が示す5つの論点

2026年版の中小企業白書・小規模企業白書は、2026年4月24日に閣議決定されました。内容は、経済産業省の公表資料や中小企業庁の白書ページで確認できます。

2026年版と2025年版から、近年の論点を表にまとめます。「白書での位置づけ」の列は公表資料の内容を要約したもので、括弧内に年版を示しています。右の列は、中堅企業の実務に引き寄せた本記事の見方です。

テーマ 白書での位置づけ 中堅企業での見え方
賃上げ 春季労使交渉で約30年ぶりの賃上げ水準が続き、最低賃金の引き上げも進む。一方で、大企業と比べて中小企業の賃上げ余力は厳しく、さらなる賃上げ原資の確保が課題とされる(2026年版) 人件費の上昇を吸収できる粗利を確保できているか。評価制度と合わせて検討しないと、賃上げが成果に結びつきにくい
人手不足 2010年代以降、多くの業種で人手不足感が強まっている。一定の試算に基づけば、労働供給制約社会の到来に伴い中小企業の雇用者数は減少が見込まれ、人手不足はさらに深刻になるおそれがあるとされる(2026年版) 採用だけに頼らず、業務の削減や自動化、外部人材の活用を並行して検討する必要がある
価格転嫁 価格転嫁の推進が、労働生産性の向上に向けた「付加価値額の増加」の取り組みの一つとして挙げられている(2026年版)。2025年版でも、価格転嫁を独立した節で取り上げている(2025年版) 原価を把握できていないと、取引先との交渉の根拠を示せない
省力化・デジタル化 AI活用・デジタル化の促進が「労働投入量の最適化」の取り組みとして挙げられている。調査に基づく分析では、省力化投資やAI活用、ITツール活用に取り組んだ企業のほうが、取り組んでいない企業より、労働投入量の最適化を達成した企業の割合が高い傾向がみられるとされる(2026年版)。2025年版では、省力化投資への支援が施策として示されている(2025年版) 手作業の多い業務から着手し、データが蓄積される形で導入する。効果は業務や導入方法によって異なる
事業承継・事業再編 事業承継・M&A(合併・買収)による事業再編が、「付加価値額の増加」に向けた取り組みの一つとして挙げられている(2026年版) 後継者や事業の将来像を、早い段階で経営課題として置く

出典:経済産業省「2026年版中小企業白書・小規模企業白書が閣議決定されました」(2026年4月24日)、中小企業庁「2025年版 中小企業白書」

2026年版の白書は、こうした経営環境の転換期について「現状維持は最大のリスクといえるだろう」と述べています。短期の損益を追うのではなく、長期的な視点で事業構造・組織構造を再構築していく「戦略」を持った経営に転換し、「稼ぐ力」を高めることが重要だ、という趣旨です。

また、2026年版の小規模企業白書は、小規模事業者を対象とした分析として、経営の基本知識(経営リテラシー)を「財務・会計」「組織・人材」「運営管理」「経営戦略」の4類型に分けています。その分析では、原価管理を詳細に行う小規模事業者ほど価格転嫁率が高く、組織活性化に取り組む小規模事業者では採用に成功している傾向がある、と示されています。いずれも傾向(関連)を示したもので、取り組めば必ず同じ結果になるという因果を示すものではありません。

なお、白書は中小企業・小規模事業者の調査・分析が主体で、売上50億円以上の中堅企業にそのまま当てはまるとは限りません。中堅企業にとっては、経営環境が向かう方向を確認する材料として参照するのが実務的です。本節の白書に関する記述は、2026年9月時点で確認した公表資料に基づいています。

規模・成長ステージによる課題の重心の違い

同じ「経営課題」でも、企業の規模や成長段階によって重心は変わります。以下は一般的な傾向を整理したもので、公的統計で確認したものではなく、実際には業種や事業構造によって異なります。

成長ステージ 課題の重心
創業・立ち上げ期 顧客の獲得、資金繰り、PMF(顧客が求める製品・サービスと市場が合致した状態)の確認
成長期 採用と育成、権限委譲、管理の仕組みづくり
成熟期(中堅企業で見られやすい) 既存事業の収益性の維持、組織の硬直化、老朽化した基盤の更新、次の柱となる新規事業
転換期 事業ポートフォリオの見直し、事業承継、M&A、出島組織(本業と切り離して新規事業を進める組織)の設計

本記事で想定する売上50億円以上の中堅企業では、中小企業向けの調査で多く挙がる人手や資金の課題に加えて、既存事業の成熟と次の柱づくり、組織の硬直化といった課題が重なりやすくなると考えられます。これは実務上想定される課題の例です。

中堅企業でも、少数の担当者が複数のテーマを兼務しているケースがあり、課題の優先順位づけを難しくする要因になります。だからこそ、次章以降の手順で、課題を絞り込む作業が重要になります。

課題は連鎖する:因果マップで根本原因をたどる

経営課題の連鎖をたどり、根本原因を見つけるビジネスパーソンのイラスト

課題を並列に並べると、どれも重要に見えて優先順位がつけられません。課題どうしのつながりを描くと、起点となる根本原因と、複数の課題に効く打ち手が見えてきます。

課題がつながる典型的なパターン

課題は多くの場合、原因と結果の連鎖で結びついています。次の表は、中堅企業で起こりやすい3つのパターンを、因果の流れとして示したものです。

パターン 連鎖の流れ
人手不足で起こり得る悪循環 人手不足 → 受注機会の損失 → 売上の停滞 → 投資余力の低下 → 処遇改善の遅れ → さらに人手不足
属人化が収益に影響するパターン 業務の属人化 → 引き継ぎ不足 → 品質のばらつき → 顧客満足の低下 → 値引き競争 → 粗利率の低下
データの分断による機会損失 顧客情報の分断 → 追客の遅れ → 商談化率の低下 → 営業工数の増加 → 新しい取り組みに割く時間の不足

上の表のように、連鎖が輪になっている場合は、途中の1か所だけを直しても再発します。「人手不足」を採用強化だけで解こうとしても、処遇改善の原資が生まれなければ、同じ循環に戻ってしまうからです。

ただし、この因果は仮説です。「離職率と受注件数の推移」など、実際のデータで裏づけを取ってから、対策の優先順位に反映してください。

根本原因から着手する考え方

連鎖の起点を探すには、「なぜ」を繰り返す方法が有効です。粗利率が下がっている場合、値引きが増えているのはなぜか、提案時に価値を示せていないのはなぜか、と掘り下げていくと、顧客の課題を把握する工程が個人任せになっている、という根本原因に行き着くことがあります。

もう一つの視点が、複数の課題に波及する「てこ」となる起点を見つけることです。営業プロセスの標準化のように、収益性・人材育成・顧客満足の3つに効く打ち手があれば、少ない投資で改善が広がります。

一方で、根本原因は社内の常識に隠れて見えにくいものです。部門をまたいだヒアリングに加え、第三者の視点で見直すことも有効です。

自社の経営課題を見つける4ステップ

経営課題を見つける4ステップを順に進めるビジネスパーソンのイラスト

経営課題の特定は、本記事では、現状把握、あるべき姿の設定、ギャップと原因の分析、優先順位づけの4ステップで進めることを提案します。公的に定められた唯一の手順ではありません。一つずつ、使うデータと判断の基準を確認していきます。

ステップ1:現状を数字と現場の声の両面で把握する

最初に、財務・営業・人事・顧客の4つの側面から、現状を数字で確認します。損益と粗利率、受注件数と成約率、離職率と欠員数、顧客アンケートや失注理由など、すでに社内にあるデータで足ります。

数字が整っていない場合は、ヒアリングで補います。経営層・管理職・現場担当者の各層に同じ質問を投げ、「この1年で最も時間を取られた業務は何か」「なぜ受注を逃したのか」といった具体的な問いで、認識のずれを浮かび上がらせます。

データ収集とヒアリングにかける期間は、社内データの整備状況や対象範囲によって異なりますが、2〜4週間程度を一つの目安にできます。完璧に情報を揃えようとして長引かせるより、意思決定に足る材料が揃った時点で次に進むほうが、実務ではうまく機能します。

ステップ2:あるべき姿を言葉と指標で置く

次に、3年後などの時間軸で、自社が目指す姿を置きます。中期経営計画があればその目標を使い、なければ経営層で「3年後にどうなっていたいか」を言葉にするところから始めます。

あるべき姿は、売上や利益といった数字だけでなく、事業の構成、顧客との関係、組織の状態など、複数の側面で書き出します。可能な範囲で指標を添えておくと、次のステップでギャップを比較しやすくなります。

ステップ3:ギャップを洗い出し、原因まで掘り下げる

ステップ1の現状とステップ2の姿を並べ、差のある項目を洗い出します。差を書くだけでなく、「なぜその差が生じているのか」の仮説まで書き、前章の連鎖の視点で起点を探します。次の表は、書き方の一例です。

項目 あるべき姿 現状 ギャップ 原因の仮説
収益性 主力事業の粗利率を安定させる 案件ごとに粗利のばらつきがある 価格と原価の把握が不十分 見積もり時に原価を確認する仕組みがない
人材 必要な職種の欠員を早期に補充できる 特定の職種で欠員が続く 採用の間口が狭い 採用要件が経験者に限られている
顧客接点 顧客情報を全社で活用できる 情報が部門ごとに分かれている 追客の遅れ 顧客データの管理が部門ごとに独立している

原因の仮説は、複数の部署に確認して裏づけを取ります。仮説が現場の実感と合わない場合は、データの取り方か、原因の見立てのどちらかがずれている可能性があります。

ステップ4:優先順位をつけて3つ程度に絞る

洗い出した課題候補は、数が多いほど着手が分散します。「重要度」と「緊急度」の2軸で評価し、必要に応じて「実現可能性」を加えて、最初に取り組む課題を3つ程度に絞ります。3つは実務上の目安で、組織の規模や実行体制に応じて調整してください。

判断軸 見る観点
重要度 解決したとき、経営目標への貢献がどれだけ大きいか
緊急度 放置したとき、状況が悪化する速さや、期限があるか
実現可能性 社内の人材・予算・時間で着手できるか。外部の力が要るか

重要度も緊急度も高い課題が最優先です。重要度は高いものの緊急度が低い課題は、放置すると後に緊急化するため、計画に組み込んで着手の時期を決めておきます。具体的な点数化の方法は、次章のチェックリストで示します。

自社診断チェックリスト:10問と点数化の方法

経営課題の診断チェックリストで、優先順位を判断するビジネスパーソンのイラスト

次の10問に「はい」か「いいえ」で答えると、課題候補の当たりがつきます。経営層と部門長が別々に回答し、結果を持ち寄ると、認識の違いも見えてきます。

  • 主力事業の粗利率が、ここ2〜3年で下がっている(収益性)
  • 欠員が半年以上埋まらない、または離職が特定の部署に偏っている(人材)
  • 特定の担当者が休むと止まってしまう業務がある(人材・組織)
  • 経営会議で決めたことが、現場で実行されないことが多い(組織)
  • 基幹システムや帳票が古く、集計や検索を手作業に頼っている(DX)
  • 顧客情報が部門ごとに分かれ、全社で見られない(顧客接点)
  • 手元資金や借入の状況を、経営層が毎月把握できていない(資金)
  • 売上の多くを、特定の顧客や特定の事業に頼っている(事業基盤)
  • 後継者や、次世代の管理職の候補が決まっていない(承継・人材)
  • 新しい収益源をつくる取り組みが止まっている、または担い手がいない(新規事業)

「はい」が付いた項目は課題候補です。簡易的な方法として、重要度と緊急度をそれぞれ1〜3点で評価し、かけ算した値の大きい順に、着手の順番を決めます。次の表は、説明用の一例です。

課題候補 重要度(1〜3) 緊急度(1〜3) 合計(積) 着手の順番
粗利率の低下 3 3 9 1
顧客情報の分断 3 2 6 2
欠員の長期化 2 3 6 2
後継候補の未定 3 1 3 計画に組み込む

点数は自社の評価に置き換えて使ってください。同点の場合は、実現可能性が高いほうから着手すると、成果が早く見え、社内の推進力になります。

ただし、法令違反、重大な安全上の問題、情報漏えい、事業継続に直結するリスクは、この点数の対象とは切り分けます。定期点検に加えて、重大なリスクが判明した時点で、点数にかかわらず優先順位を繰り上げ、緊急対応の要否を専門部署や専門家と確認してください。このチェックリストは、事業運営上の主要な課題を対象にしています。

点数化の結果について経営層と部門長の見解が割れる場合や、連鎖の起点に自信が持てない場合は、社外の視点を入れると整理が進みます。人事制度や組織設計に関わる課題であれば、TechHouse.Worksでも、課題の整理から一緒に考える立場で相談してみることができます。

経営課題の解決策と進め方

経営課題の解決策を実行計画に組み立てるチームのイラスト

課題を絞り込んだら、解決の方向性を決め、実行計画に落とします。ここでは、課題別の代表的な方向性、実行計画の型、そして中堅企業で順序が問われるDX・新規事業・組織の扱い方を整理します。

課題別に見る解決の方向性と最初の一手

課題の分類ごとに、代表的な解決の方向性と、最初に着手しやすい一手を整理します。方向性は複数あり、自社の状況に合わせて組み合わせます。

課題 解決の方向性 最初の一手
収益性 価格の見直し、原価管理の精緻化、不採算事業の整理、付加価値の高い商品・サービスへの転換 案件別の粗利を月次で見える化する
人材 採用・育成の仕組み化、評価と処遇の見直し、外部人材の活用 必要な職種・人数・時期を洗い出す
組織 意思決定ルールの明確化、権限委譲、部門横断の会議体の整理 会議体と決裁経路を棚卸しする
DX・デジタル化 業務のデジタル化、データの一元化、その上での業務・顧客対応の変革 手作業の多い業務を一つ選び、工数を測る
資金・コスト 資金計画の策定、調達手段の見直し、固定費の再点検 資金繰り表を月次で更新する
事業基盤・承継 事業承継計画の策定、事業ポートフォリオの見直し、M&Aの検討 後継候補と時期を確認する
顧客・マーケティング 顧客接点データの統合、営業プロセスの標準化、既存顧客への提案強化 流入から成約までの件数を可視化する

収益性の最初の一手である粗利の見える化は、価格交渉の土台にもなると考えられます。前述の小規模企業白書の分析でも、原価管理を詳細に行う小規模事業者ほど価格転嫁率が高い傾向が示されています。人材や組織の課題では、評価制度や組織設計の見直しが解決の中心になることが少なくありません。制度づくりの考え方は、人事制度設計に関する解説記事で詳しく整理しています。

解決策を実行計画に落とす5つの型

解決策は、方向性を決めただけでは動きません。次の5つの型に沿って、実行計画に落とし込みます。

  1. 目標を置く:解決後の姿を、期限と指標つきで決める
  2. 計画を立てる:施策を分解し、時期と順序を決める
  3. 体制をつくる:責任者と担当者、必要な予算を決める
  4. 効果を測る:指標を1〜3個程度に絞り、月次または四半期で確認する
  5. 見直す:結果を踏まえて、施策と計画を更新する

課題解決が一過性の対策で終わる要因の一つとして、経営戦略や事業戦略との接続不足が挙げられます。全社の方針と結びつけ、経営層の中に責任者を置くことで、担当者の兼務による停滞を防げます。

また、指標を絞ることも重要です。測る項目が多すぎると、確認そのものが負担になり、四半期の見直しが形骸化します。課題ごとに1〜3個程度の指標を選び、経営会議で定点観測する形が現実的です。個数は目安であり、課題の性質に合わせて調整してください。

DX・新規事業・組織の順序と、一般化した事例パターン

中堅企業でDX・新規事業・組織の課題が同時に並ぶ場合は、デジタル化、顧客接点の改革、新規事業の順序で考えると、手戻りが少なくなりやすいと考えられます。業務のデジタル化で社内にデータが蓄積され、顧客接点の改革でそのデータが顧客の行動と結びつき、その土台の上で新規事業の仮説検証を進めやすくなるためです。ただし、順序は事業課題や既存のデータ整備状況によって前後します。

新規事業そのものの考え方を確認したい場合は、新規事業の基礎を解説した記事も参考になります。

ここでは、進め方のイメージとして、住宅・不動産・建設関連の中堅企業で見られる状況を一般化したパターンを示します。特定の企業や案件を指すものではありません。

症状としては、展示場の来場や資料請求は続いている一方で、顧客情報が営業所ごとに管理され、追客の担当やタイミングが個人任せになっています。加えて、施工管理の人材が不足し、受注を絞らざるを得ない場面も出ています。

建設業では、2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用されています(厚生労働省)。原則は月45時間・年360時間以内で、特別条項付きの36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)を結ぶ場合でも、年720時間、月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)といった上限があります。災害時の復旧・復興の事業には、月100時間未満と複数月平均80時間以内の規制が適用されない特例があります。上限規制への対応として、工期の設定や人員配置の見直しが課題になり得ます。

進め方は、次の順序が考えられます。まず顧客情報を一元化し(デジタル化)、次に追客のルールを標準化して成約率を把握し(顧客接点の改革)、そのうえで、アフター点検やリフォーム、資産活用の相談など、既存顧客との接点を生かした周辺事業を検討します(新規事業)。

この順序であれば、成約や失注の理由がデータで見えるようになり、周辺事業を検討する際の材料が手元に揃います。顧客データが不足している企業では、新規事業から先に着手すると、仮説の検証に追加の調査や工数が必要になる場合があります。

フレームワーク・ツール・外部の力の活用

経営課題の整理にフレームワークやツール、外部の専門家を活用するイラスト

課題の整理や解決を進める際は、フレームワークやツール、外部の専門家といった手段を使い分けます。それぞれの使いどころと、選ぶ際の判断基準を整理します。

課題の発見・整理に使えるフレームワークの使いどころ

代表的なフレームワークを、4ステップのどこで使うかとあわせて整理します。すべてを使う必要はなく、1〜2つに絞って使うのが現実的です。

フレームワーク 内容 使いどころ
SWOT分析 強み・弱み・機会・脅威の4象限で整理する あるべき姿の設定、現状の整理
3C分析 顧客・競合・自社の3つの視点で環境を整理する 顧客接点や収益性の課題の洗い出し
PEST分析 政治・経済・社会・技術の外部環境を整理する 中長期の環境変化の把握
バランススコアカード 財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4視点で指標を整理する 課題を指標に落とし、進捗を管理する
ロジックツリー 課題を原因や施策へ階層的に分解する 原因の掘り下げ、施策の分解

フレームワークは、枠を埋めること自体が目的になると、形式だけが整って結論が出ません。「どの課題を絞り込むために使うのか」を先に決め、その目的に合う枠だけを選んでください。

ツールを導入するときに確認すること

システムやツールの導入は、業務プロセスの改善やデータの一元化に効果があります。ただし、ツールは課題を解決する手段であって、課題そのものを解決してくれるわけではありません。

導入前に確認したいのは、次の3点です。何の課題を解消するのかという目的、費用に見合う効果が見込めるかという費用対効果、そして導入後に運用を担う人と時間を確保できるかという運用体制です。

特に運用体制は見落とされやすい点です。手作業の多い1つの業務に絞って小さく試し、効果を確かめてから範囲を広げると、投資の失敗を抑えられます。

外部の力を借りる判断基準と選び方

課題の整理や解決を社内だけで進めるか、外部の力を借りるかは、次の観点で判断します。該当する領域の経験者が社内にいない場合、当事者だと見えにくい論点がある場合、期限が迫っている場合、部門間の利害調整が必要な場合は、外部の力を借りる価値が高まります。

外部の支援には複数の形態があり、得意なことと向いている場面が異なります。

支援の形態 得意なこと 向いている場面
社内での取り組み 自社の事情に即した運用、ノウハウの蓄積 課題が明確で、担える人材が社内にいる
公的機関の相談窓口 経営全般の初期相談、専門家の紹介 課題の整理段階で、費用を抑えて第三者の意見が欲しい
助言型のコンサルティング 分析や戦略の立案、専門知識の提供 方針や計画づくりに専門知識が必要
伴走型の支援 計画の実行まで含めた、継続的な支援 実行のリソースが足りず、成果が出るまで並走してほしい

公的機関の窓口は、対象者・支援内容・利用条件が窓口ごとに異なるため、事前の確認が必要です。

伴走型の支援の一つに、スタートアップスタジオがあります。一般的には、新規事業を継続的に立ち上げる体制を持つ組織が、資金・人材・ノウハウを事業側と共同で提供する形を指します。事業モデルは運営主体によって複数あります。新規事業に課題が集中している場合に、選択肢になります。

いずれの形態でも、選ぶ際は次の点を確認します。支援の範囲(助言までか、実行まで含むか)、実務での経験、進め方の透明性、費用の体系、そして支援終了後に自社で回せるようになるかという点です。

よくある質問(FAQ)

経営課題に関して、よく寄せられる疑問に答えます。

Q1. 経営上の問題とは何ですか?

経営上の問題とは、資金繰りの悪化、品質事故、法令違反、主要顧客の離脱など、経営に悪影響を及ぼしている顕在化した不具合を指します。

問題が起きたときは、まず被害を止める応急対応を行い、そのうえで、再発を防ぐ根本原因を課題に言い換えて取り組む、という二段構えで進めます。応急対応だけで終えると、同じ問題が繰り返されます。

Q2. 「経営課題」の言い換えには、どのような表現がありますか?

文脈によって、次のような表現が使われます。資料や会議の場面に合わせて使い分けると、意図が伝わりやすくなります。

表現 ニュアンス 使う場面
重点課題 優先的に取り組むもの 経営計画、年度方針
経営テーマ 中長期で取り組む方向性 方針説明、社内への発信
経営上の論点 議論して決めるべき点 経営会議の資料
戦略課題 戦略の実現に必要な課題 戦略の策定
対処すべき課題 事業上・財務上で対応が要る課題 有価証券報告書などの開示資料

Q3. 経営者自身の問題点として指摘されやすいことは何ですか?

よく指摘される傾向として、意思決定が経営者個人に集中して属人化すること、後継者の育成や選定が後回しになること、社内の情報が経営者に届く経路が限られて判断が偏ることが挙げられます。個々の経営者に当てはまるとは限らない、一般的な傾向です。

対処としては、判断の基準を言語化して共有する、社外の視点(顧問や外部の相談先)を取り入れる、後継者の計画を経営課題として明示する、といった方法があります。

Q4. 経営課題の見直しは、どのくらいの頻度で行えばよいですか?

全体の見直しは、年次の経営計画をつくる時期に行うのが基本です。そのうえで、四半期ごとに、進捗と優先順位を確認します。

主要顧客の変動、法改正、災害など、環境が急に変わった場合は、時期を待たずに随時見直します。見直しの頻度よりも、決まった場で定期的に確認する習慣を持つことのほうが大切です。

Q5. 課題の整理を相談できる公的な窓口はありますか?

中小企業・小規模事業者向けには、経営全般の相談に無料で応じるよろず支援拠点が、全国47都道府県に設置されています。対象は、中小企業・小規模事業者のほか、NPO法人・一般社団法人・社会福祉法人等でこれらに類する方、創業予定の方です。後継者や事業の引き継ぎについては、中小企業・小規模事業者を対象に、親族内承継や従業員承継、M&Aなど社外への引き継ぎまで相談できる事業承継・引継ぎ支援センターがあります。課題の整理段階ならよろず支援拠点、事業承継やM&Aの相談なら事業承継・引継ぎ支援センター、と使い分けると探しやすくなります。

いずれも中小企業・小規模事業者が主な対象です。中小企業基本法上の中小企業(資本金や従業員数で区分されます)に該当しない場合は、主な対象から外れる可能性があります。本記事で想定する売上50億円以上の中堅企業も、業種や資本金・従業員数によっては当てはまらないことがあります。法人の種類や相談内容によって扱いが異なるため、利用前に各窓口へ対象や対応範囲を確認してください。

まとめ

経営課題とは、目指す姿と現状のギャップを埋めるために解決すべき重要なテーマです。自社の課題は、現状把握、あるべき姿の設定、ギャップと原因の分析、優先順位づけの4ステップで見つけ、3つ程度に絞って実行計画に落とします。

まずは、次の順で進めてみてください。今週は、経営層と部門長がそれぞれチェックリストに回答します。続く2〜4週間程度で、現状のデータとヒアリングをそろえます。そのうえで、点数化して着手する課題を3つ程度に絞ります。

経営課題のうち、新規事業・DX・組織づくりが重なる場合の選択肢の一つとして、TechHouse.Worksでは、出資と継続的な伴走支援を組み合わせたスタートアップスタジオモデルを提供しています。シード期からアーリー期を対象に最大500万円のマイクロ出資と伴走支援を行う「Boot UP!」、アーリー期からEXIT(出口)までを対象とした「Listing ON」、越境人材の育成や組織間コラボレーションを通じて事業や組織の変化を促す越境共創プログラムの「Beyond Borders」があります。出資額や支援の条件は、プログラムごとの公式案内で確認できます。

課題の整理から新規事業・DX・組織づくりまで、自社の挑戦を誰と一緒に進めるかを検討されている方は、お気軽に相談を申し込むことをおすすめします。お問い合わせフォームから、現在の課題や検討中のテーマをお伝えください。

越境や組織変革に関するより深い考え方は、noteでも発信しています。