越境経験とは?企業が得るメリットとリスク、導入の進め方をわかりやすく解説

越境経験の意味と企業への広がりをテーマにした線画イラスト。組織の枠を越えて人がつながる様子を表現

「社員にもっと視野を広げてほしいが、社内の研修だけでは限界がある」「副業や兼業の解禁を検討しているものの、何から手をつければいいのか分からない」「新規事業を任せられる人材が社内にいない」——中堅企業の人事担当者や新規事業責任者からは、こうした声がよく聞かれます。

社内だけで人材を育てようとすると、どうしても経験の幅が偏りがちです。既存事業のやり方や社内の常識が当たり前になり、新しい発想が生まれにくくなることも少なくありません。こうした課題への打ち手として近年注目されているのが「越境経験」です。所属する組織の外に出て異なる環境で学ぶことで、個人の視野が広がるだけでなく、そこで得た知見が本業や新規事業に還元されることが期待されています。

そこで本記事では、越境経験の基本的な定義から、企業が得られるメリットとリスク、導入の具体的な進め方、業種別の論点までを、新規事業やDX、組織変革に取り組む中堅企業の担当者に向けて網羅的に解説します。

沖岡 豊大

沖岡 豊大

我々は誰もが挑戦の歩みを止めず、
失敗を糧に再チャレンジできる寛容な社会の実現を
目指して活動しています。

創業背景としては、エンジニア起業家の養成スクールで得た気づきがきっかけでした。自身のWhy meをプロダクトに落とし込み、投資家に対してピッチを行うのですが、卒業後も挑戦を”続けられる”人間がごく僅かだということを実感しました。志のある優秀な方でも、リスクを背負い、様々なハードシングスを乗り越えながら進み続けることは、実際には非常に困難です。そこで、起業家に同志として寄り添い、何度でも挑戦し続けられる環境を構築したいと思うようになり創業に至りました。
最終的にわたしもいち起業家として、TechHouse.Worksのサポートを得ながら、新たな事業を創るのが私の夢です。

目次

越境経験とは何か

越境経験の定義と関連用語の違いを整理する担当者2名の線画イラスト

越境経験を正しく活用するためには、まず言葉の定義と、混同されやすい関連概念との違いを整理しておく必要があります。

越境経験の定義

越境経験とは、社員が所属する組織の枠を越えて、異なる環境で活動し、そこで得た気づきや知識を自分の仕事に持ち帰る一連の経験を指します。人材開発の分野では、個人が所属する組織の境界を行き来しながら、自分の業務に関連する内容を学習・内省するプロセスとして捉えられており、こうした学びのプロセス全体を指す言葉として「越境学習」という用語も広く使われています。越境経験はその学習プロセスの土台となる、実際の活動そのものと考えると分かりやすいでしょう。

具体的には、他社への出向、副業・兼業、社外のプログラムへの参加、ボランティア活動といった、社員自らが社外に出て学ぶ形態が中心に語られます。加えて実務上は、自社が外部人材を受け入れることを「越境の仕組みを組織に取り込む施策」として扱うケースもあり、本記事では後述のとおり、この受け入れ型も含めて越境経験の全体像を整理します。共通しているのは「ホーム(慣れ親しんだ組織)」と「アウェイ(異なる環境)」を行き来する点であり、その往還のなかで自分の当たり前を問い直す機会が生まれることが、越境経験の本質的な価値です。

越境学習・越境体験との違い

越境経験・越境体験・越境学習は、実務上ほぼ同じ文脈で使われることが多い一方、厳密には次のようなニュアンスの違いがあります。越境体験・越境経験は「異なる環境に身を置いた事実」そのものを指すのに対し、越境学習はその経験を通じて何を学び、どう内省したかというプロセスに重きを置く言葉です。つまり、単に社外に出るだけでは越境経験にとどまり、そこでの気づきを言語化し本業に還元する仕組みが伴って初めて、越境学習として機能します。企業が越境経験を導入する際は、経験させること自体をゴールにせず、振り返りと還元の仕組みをセットで設計することが重要です。

出向・副業・兼業との違い

越境経験は、出向や副業・兼業といった特定の制度を指す言葉ではなく、それらを含む上位概念です。出向は雇用契約や指揮命令権の所在を伴う人事上の制度であり、副業・兼業は労働時間や労務管理のルールが関わる働き方の選択肢です。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は平成30年1月に策定され、その後令和2年9月、令和4年7月と改定が重ねられており、労働者の多様なキャリア形成を支援する観点から、労働時間管理や企業の情報開示のあり方が明確化されています。具体的には、令和4年7月改定版で、副業・兼業を許容しているか否かや条件を自社ホームページ等で公表することが望ましいとされたほか、労働時間管理の簡便な方法の一つとして「管理モデル」が示されました。これは、先に契約した企業の法定外労働時間と、後から契約した企業の労働時間とを合計した場合に、単月100時間未満・複数月平均80時間以内の上限規制内に収まるよう、それぞれの企業があらかじめ労働時間の上限を設定しておくという考え方です。越境経験を検討する際は、どの制度・スキームを使うかによって労務上の留意点が異なるため、目的に応じて適切な形態を選ぶ視点が欠かせません。

なぜ今、越境経験が注目されているのか

越境経験が注目される社会的背景を捉える担当者の線画イラスト

越境経験というテーマが企業の人材戦略のなかで存在感を増している背景には、複数の社会的な変化が重なっています。

人材の流動性・キャリア自律志向の高まり

終身雇用を前提とした働き方が見直され、個人が自らのキャリアを主体的に設計する「キャリア自律」の考え方が広がっています。転職や副業を通じて自分の市場価値を確かめたいと考える人材が増えるなかで、企業が社内に人材をとどめておくためには、社外に出ることを一律に制限するのではなく、越境経験の機会を戦略的に提供する発想への転換が求められています。

新規事業創出を迫られる企業側の事情

既存事業の成長が鈍化するなかで、新規事業への挑戦を経営課題として掲げる中堅企業は少なくありません。しかし、社内の人材だけで新しい事業の芽を育てようとしても、これまでの成功体験や業界の常識が足かせとなり、発想の幅が広がりにくいという壁に直面しがちです。経済産業省は令和元年度の補正予算事業を通じて、大企業人材が出向という形で他社の新規事業に関わる「出向起業」を後押しする手引き、越境による学びの効果を測定する指標「越境体験ルーブリック」、出向契約で定めておくべき条項例を示す「スタートアップ出向モデル契約書」といった実務資料の整備を支援しており、こうした国の動きも、越境経験を企業の新規事業戦略に組み込む後押しとなっています。

中堅企業における人材確保・育成の課題

中堅企業では、大企業に比べて新規事業や組織変革を任せられる人材の絶対数が限られているという事情もあります。自社で一から育成するには時間がかかる一方、外部から即戦力を採用しようとしても、思想やカルチャーが合わない人材とのミスマッチが起きやすいという課題も抱えがちです。こうした状況のなかで、社員を外部に送り出す越境経験だけでなく、大企業等の外部人材を自社に迎え入れる「受け入れ型」の越境経験も、実務的な選択肢として注目され始めています。

越境経験の主な種類と特徴

出向・副業・受け入れ型など越境経験の種類を比較検討する線画イラスト

越境経験と一口に言っても、実施主体や関わり方によっていくつかの形態に分かれます。自社の目的に合った形態を選ぶために、まずは全体像を整理しておきましょう。

種類主体期間の目安特徴
出向型送り出す企業数か月〜数年他社の業務に一定期間従事し、実践のなかで学ぶ。労務管理の設計が必要
副業・兼業型個人継続的(週数時間〜)本業を続けながら別の組織で活動する。労働時間の通算管理が論点になる
研修・プログラム参加型送り出す企業数日〜数週間外部機関が提供する越境プログラムに一時的に参加する。導入のハードルが比較的低い
外部人材受け入れ型受け入れる企業数か月〜大企業等の人材を自社に迎え入れ、新規事業や組織改革を推進する

出向型・副業型・研修参加型は、いずれも「自社の社員を外に出す」視点の越境経験です。一方で、外部人材受け入れ型は「外の視点を自社に取り込む」という逆方向のアプローチであり、送り出す側の制度設計に比べて情報が少ないのが実情ですが、中堅企業が短期間で新しい知見や実行力を組織に取り込む手段として、実務的な有効性が高い選択肢です。どの形態を選ぶ場合も、目的(何を学び、何を得たいか)を先に定めたうえで手段を選ぶ順序を守ることが、失敗を避けるポイントになります。

越境経験がもたらすメリット

個人・送り出す企業・受け入れる企業それぞれが得るメリットを表す線画イラスト

越境経験は、個人・送り出す企業・受け入れる企業のそれぞれに異なる価値をもたらします。

個人にとってのメリット

異なる環境に身を置くことで、自分では気づけなかった強みや弱み、思考の癖に気づく機会が得られます。人材育成・組織開発を専門とするリクルートマネジメントソリューションズが実施した越境活動経験者401名(従業員300名以上の企業に勤務する正社員が対象)への調査(2016年9月実施、「RMS Message」誌上で公表)では、経験者の約8割が「新しい人的ネットワークができた」「新しいものの見方ができた」「人間的に成長できた」「新しい知識や能力が獲得できた」と回答しており、越境経験が個人の成長実感に直結していることがうかがえます。また、調査対象者の約6割が「仕事の目的や意味について考えるようになった」と回答するなど、キャリアや仕事観そのものを見つめ直すきっかけにもなっています。

送り出す企業にとってのメリット

社員を外部に送り出す企業側にとっての最大のメリットは、社内だけでは得られない知見やネットワークを、コストを抑えながら組織に還元できる点です。前述の調査では、越境経験者の76.6%が「得たものを積極的に本業に生かしたい」と回答しており、経験を一過性のものに終わらせず、本業に還元する意欲を持つ人材が多いことも示されています。また、越境経験を通じて社員のエンゲージメントが高まり、離職防止につながるという副次的な効果も期待できます。

受け入れる企業にとってのメリット

一方、外部人材を受け入れる企業側にとっては、社内にない専門性や実行力を短期間で取り込めることが大きな利点です。特に新規事業の立ち上げ期は、既存事業の延長線上にはないスキルやスピード感が求められる場面が多く、外部人材の知見をそのまま活用できることは、自社での育成にかかる時間を大きく圧縮できるという意味で実務的な価値があります。中堅企業が新規事業に挑戦する際、社内リソースの制約を補う手段として、受け入れ型の越境経験は検討する余地の大きい選択肢と言えるでしょう。TechHouse.Worksでも、社外での経験を積んだ越境人材の知見を組織に取り込む「越境人材育成プログラム」や、企業同士の組織間コラボレーションを支援する仕組みを「Beyond Borders」として提供しており、外部人材を受け入れる形で越境経験を組織に取り込みたい場合は、専門家へのご相談もご活用いただけます。

失敗しやすいパターンとリスクへの向き合い方

越境経験の失敗パターンを慎重に確認する担当者の線画イラスト

越境経験にはメリットが期待できる一方、設計を誤ると期待した効果が得られない、あるいは逆効果になるケースもあります。ここでは代表的な失敗パターンと、その予防策を整理します。

孤立・浮いてしまうケース

越境先の環境になじめず、孤立感を抱いてしまうケースは、越境経験における典型的な失敗パターンの一つです。異なる組織文化のなかで自分の役割が見出せず、居場所のなさを感じてしまうと、本来得られるはずの学びも半減してしまいます。受け入れ側・送り出し側の双方が、越境者が孤立しないようフォロー役やメンターを配置するなど、コミュニケーションの導線をあらかじめ設計しておくことが重要です。

本業とのバランスが崩れるケース

副業・兼業型の越境経験では、本業とのバランス管理が課題になりやすい点にも注意が必要です。厚生労働省のガイドラインでは、先に契約した企業の法定外労働時間と後から契約した企業の労働時間を合計し、単月100時間未満・複数月平均80時間以内の上限規制内に収まるようそれぞれの企業が労働時間の上限を設定する「管理モデル」という簡便な管理方法が示されており、企業側は健康管理や労働時間の把握を怠らないようにする必要があります。なお、労働基準法上の「労働者」に該当するかどうかは、契約の名称ではなく実際の働き方の実態(指揮命令の有無や時間的・場所的な拘束の程度など)に基づいて総合的に判断される点に注意が必要です。副業先で個人事業主として業務委託契約を結ぶ場合でも、契約の形式だけを理由に一律に労基法の適用対象外とは言い切れませんが、実態として発注者からの指揮命令を受けずに業務を遂行しているケースでは、労働基準法上の「労働者」に該当せず、この労働時間の通算管理も対象外となることが多いとされています。また、法的な扱いが異なるだけで長時間労働による健康リスクがなくなるわけでもないため、契約形態の確認とあわせて、本人・企業双方が業務量と休息のバランスに配慮することが欠かせません。越境経験に熱中するあまり本業への影響が大きくなりすぎないよう、事前に一定の目安時間や期間を設定しておくことが望ましいでしょう。

受け入れ体制不足による失敗

外部人材受け入れ型の越境経験では、受け入れる企業側の体制不足が失敗要因になりがちです。受け入れる目的や役割が曖昧なまま外部人材を迎え入れると、既存社員との摩擦が生まれたり、外部人材本人が力を発揮できないまま終わってしまったりすることがあります。誰が責任を持って受け入れを推進するのか、社内のどの部署と連携するのかを事前に明確にしておくことが欠かせません。

アンラーニングと定期的な内省で失敗を防ぐ

越境経験を成果につなげるには、これまでの成功体験や固定観念を一度手放す「アンラーニング(学びほぐし)」の視点が重要になります。異なる環境での経験を、既存の枠組みのなかだけで解釈しようとすると、新しい学びを取りこぼしてしまいます。定期的に振り返りの機会を設け、越境者自身が「何に違和感を覚えたか」「これまでの考え方とどう違ったか」を言語化するプロセスを組み込むことで、孤立感やストレスの軽減にもつながり、越境経験の効果を最大化できます。

越境経験導入の流れと期間の目安

越境経験導入のステップを一歩ずつ進める担当者の線画イラスト

越境経験を組織として導入する際は、思いつきで始めるのではなく、段階を踏んで設計することが成功の分かれ目になります。

ステップ期間の目安主な内容
目的設定・対象者選定2週間〜1か月越境経験を通じて何を得たいかを明確にし、対象者や受け入れ先の条件を検討する
プログラム設計・受け入れ先の確保1〜2か月出向先や副業先、外部人材の受け入れ体制など、実施の枠組みを整備する
実施数か月〜1年程度越境経験そのものを実践する期間。途中で定期的な振り返りの場を組み込む
振り返り・本業への還元1か月程度得られた学びを言語化し、本業や組織全体にフィードバックする

特に見落とされがちなのが、実施期間中の「振り返り」と、終了後の「本業への還元」のプロセスです。経済産業省は2025年に「越境学習を支える伴走者のための実践ガイドライン」を公開しており、越境者本人だけでなく、それを支える上司や人事担当者といった伴走者側の関わり方の重要性が示されています。越境経験を実施しっぱなしにせず、組織として学びを吸い上げる仕組みをセットで設計することが、投資対効果を高めるポイントです。

コスト・リソース感

越境経験にかかる費用や社内工数を検討する担当者の線画イラスト

越境経験の導入を検討する際、多くの担当者が気にするのがコストと社内工数です。ここでは目安となる幅を示します。

費用の目安

費用は形態によって大きく異なります。社員を外部の研修・越境プログラムに参加させる場合、プログラムの内容や期間に応じて数万円から数十万円程度の参加費用がかかるケースが一例として挙げられますが、公開された市場相場のデータは整備されておらず、あくまで一つの目安にとどまる点には留意が必要です。出向型は給与を出向元・出向先のどちらが負担するかによって企業側の実質的な費用感が変わり、副業・兼業型は基本的に個人が別途対価を得る形になるため、企業側の直接的な金銭負担は小さい一方、労務管理の体制整備にかかる工数が発生します。外部人材受け入れ型は、人材の紹介・マッチングを担う事業者を介する場合、紹介料や継続的な支援料が発生するケースもあります。いずれの形態も、最終的な費用はプログラム内容・期間・支援体制によって個別性が高いため、複数の選択肢を比較しながら事業者に個別の見積もりを確認することをおすすめします。

社内工数・体制

金銭的なコスト以上に見落とされがちなのが、社内の工数です。対象者の選定、受け入れ先との調整、実施中のフォロー、終了後の振り返りの場づくりなど、越境経験を一つのプロジェクトとして推進するには、専任または兼任の担当者を置くことが望ましいでしょう。特に中堅企業では、人事担当者が他の業務と兼務しながら越境経験の推進を担うケースが多く、初回は小規模な取り組みから始め、社内にノウハウを蓄積しながら徐々に対象範囲を広げていく進め方が現実的です。

業種・企業規模別に見る越境経験の論点

業種や企業規模ごとの越境経験の論点を話し合う担当者の線画イラスト

越境経験の効果は業種や企業規模によっても現れ方が異なります。自社の状況に照らして検討する視点を持つことが重要です。

中堅企業特有の課題

売上規模の大きい中堅企業では、大企業に比べて人事部門の専任リソースが限られている一方、スタートアップほど身軽に制度を変えられるわけでもないという、独特の難しさがあります。既存事業の運営を止めるわけにはいかない一方、次の成長の柱となる新規事業や組織変革の担い手も必要という板挟みのなかで、越境経験を「まずは少人数の試験導入から」という形でスモールスタートさせる企業が多いのも、こうした事情が背景にあります。

ハウスメーカー・不動産・建設業系での具体展開

ハウスメーカーや不動産・建設業系のように、既存の商流や現場運用、法規制対応が複雑な業種では、社内の知見だけで新しい発想を生み出す設計に難しさを感じるケースがあります。こうした業種では、IT・スタートアップ領域など異なる業界の人材を受け入れる、あるいは自社の社員をデジタル化が進んだ業界に一時的に送り出すといった形で、意図的に「違い」に触れる機会をつくることが、DX推進や新規事業の種を見つけるきっかけになる場合があります。既存の取引先や商習慣の枠内だけで検討を進めるのではなく、越境経験を通じて外部の視点を取り込むことは、こうした業種にとって有効な打ち手の一つになり得ます。

テクノロジーが広げる新しい越境のかたち

オンラインでつながる新しい越境のかたちを表す線画イラスト

近年は、物理的に移動を伴わない形での越境経験も広がりつつあります。

オンライン・リモートでの越境

オンライン会議やクラウドツールの普及により、出向や研修に伴う移動を最小限に抑えながら、他社のプロジェクトに関与する形の越境経験が可能になっています。地理的な制約が小さくなったことで、遠方の企業や海外の人材との越境経験も、以前より現実的な選択肢になりつつあります。

バーチャル越境のメリットと注意点

オンラインでの越境は、移動コストや時間的な制約を抑えられる点が大きなメリットです。一方で、対面での越境経験に比べて偶発的な雑談や非公式なコミュニケーションが生まれにくく、孤立感を抱きやすいという注意点もあります。オンラインでの越境経験を設計する際は、定例の振り返りミーティングを意識的に設けるなど、対面以上に丁寧なコミュニケーション設計を心がける必要があります。

越境経験を始める前のチェックリスト

越境経験を始める前に確認事項を整理する担当者の線画イラスト

越境経験の導入を検討する際、着手前に以下の点を確認しておくと、実施後の振り返りがスムーズになります。

  • 越境経験を通じて得たい成果(視野拡大・スキル獲得・新規事業の種の発掘など)が明確になっているか
  • 対象者本人の意向と、周囲の理解・協力が得られているか
  • 労働時間管理や契約形態など、労務上の留意点を確認済みか
  • 実施中・終了後の振り返りの場をあらかじめ設計しているか
  • 得られた学びを本業や組織にどう還元するか、受け皿となる仕組みがあるか

よくある質問(FAQ)

Q1. 越境経験とは具体的にどのような活動を指しますか?

他社への出向、副業・兼業、外部の研修・プログラムへの参加、ボランティア活動、外部人材の受け入れなど、所属する組織の枠を越えて異なる環境に身を置く活動全般を指します。どの形態を選ぶかは、得たい成果や自社の状況によって異なります。

Q2. 越境経験と副業・兼業はどう違いますか?

副業・兼業は越境経験の一形態です。越境経験はより広い概念で、出向や研修参加、外部人材の受け入れなど、副業・兼業以外の形態も含みます。副業・兼業を検討する場合は、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」で示されている労働時間管理等のルールを確認しておく必要があります。

Q3. 越境経験にはどのくらいの費用がかかりますか?

形態によって幅が大きく、内容・期間・支援体制によって個別性が高いため、最終的には個別の見積もりで確認することをおすすめします。研修・プログラム参加型は内容や期間に応じて数万円程度から始められるケースもありますが、公開された市場相場のデータは整備されていません。出向型は給与負担の分担によって企業側の実質コストが変わり、外部人材受け入れ型は紹介・マッチングを担う事業者を介する場合に紹介料や支援料が発生するケースも少なくありません。予算感に応じて複数の選択肢を比較検討することをおすすめします。

Q4. 越境経験は誰でも挑戦できますか?

多くの越境経験は特別な資格を必須としませんが、出向・副業・兼業では就業規則上の許可基準、秘密保持や競業避止義務、労働時間の通算管理、受け入れ先が求める適性など、事前に確認すべき点がいくつかあります。年齢や役職に関わらず挑戦できる形態が多く、重要なのはスキルの有無よりも新しい環境に飛び込む意欲があるかどうかですが、契約形態によっては会社側の許可・調整が必要になるため、事前に社内制度を確認しておくとよいでしょう。

Q5. 越境経験を受け入れる企業側にはどんなメリットがありますか?

社内にない専門性やスピード感を短期間で取り込める点が最大のメリットです。特に新規事業の立ち上げ期など、既存の延長線上にないスキルが求められる場面で、外部人材の知見をそのまま活用できることは、自社育成にかかる時間を圧縮する意味でも実務的な価値があります。

Q6. 越境経験の効果はどうやって測定すればよいですか?

定量的な指標としては、参加者数や本業への還元事例の数などを追う方法があります。定性的な指標としては、越境経験を通じて得た気づきや行動の変化について、本人へのヒアリングやアンケートで振り返りを行う方法が一般的です。経済産業省が公開している越境体験ルーブリックのような測定指標を参考に、自社なりの評価軸を用意しておくと、継続的な取り組みにつなげやすくなります。

まとめ

越境経験は、社員を外部に送り出す形だけでなく、外部人材を自社に迎え入れる形も含めた幅広い概念であり、個人の成長だけでなく、新規事業の創出や組織変革の推進力としても注目されています。一方で、孤立や本業とのバランス崩れ、受け入れ体制不足といった失敗パターンも存在するため、目的設定から振り返り・本業への還元までを見据えた設計が欠かせません。

TechHouse.Worksでは、出資(最大500万円)と継続的な伴走支援を組み合わせたスタートアップスタジオモデルのなかで、越境人材の知見を組織に取り込む越境人材育成プログラムや組織間コラボレーションを支援する「Beyond Borders」というサービスを提供しています。社内に越境経験をどう取り込み、新規事業や組織変革につなげていくか——「自社の挑戦を、誰と一緒に進めるか」を検討されている方は、お気軽にご相談ください。

なお、越境や組織変革に関するより深い思想・原論については、note(https://note.com/tech_okioka)でも発信しています。